【なでしこ】初戦は屈辱のノーゴール。アルガルベで若手は成長するのか? (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Hayakusa Noriko

 そんななか、強気のプレイで何とか局面を打開しようと積極的にトライしていた選手がいた。左サイドバックで先発した加戸由佳だ。監督から事前に指示を受けていたとおり、前半途中からは右サイドバックに入った。

 U-20女子ワールドカップチリ大会(2008年)で、佐々木監督のもと、元々前線の選手である加戸はサイドバックに初めてトライした。そして今回、なでしこジャパンとして最初に得た出場チャンスも同じポジションだった。

 サイドバックは、なでしこジャパンのサッカーにとって肝となるポジション。目下、不動のレギュラーである近賀ゆかりがケガで離脱していることもあって新戦力大募集中だ。戸惑うことも多いこのポジションで、加戸は果敢にオーバーラップを試みた。もちろんミスもあったが、奪われてもなんとか取り戻そうとする姿勢が強く現れていた。

「攻撃は次につながるところもあったけど、守備では2失点......。特に2失点目は防げたと思うので悔しいです。コミュニケーション不足やポジショニングなど修正するところだらけです」と、加戸本人は自らのプレイにまったく納得していない。

 そして、前半途中から出場した鮫島彩のプレイが、加戸の悔しさを増幅させた。

「鮫島さんは本当に効果的に上がって行って、流れを変えた。私は後半一本も上がれなかったので、継続してやれるようにならないとダメですね。このままじゃ、テレビでこの試合を見てくれている(湯郷の)チームメイトの宮間(あや)さんや福元(美穂)さんに合わせる顔がありません!」と、リベンジを誓った。

 一方、若手ではないけれど主軸でもない、何とかここで一皮むけたいと、合宿からやる気を漲(みなぎ)らせているのが、田中明日菜だ。澤穂希&阪口夢穂の黄金ボランチコンビがいない今回のメンバーの中で、田中はボランチの軸になっている。

 田中にとってこのアルガルベカップは縁起のいい大会だ。なでしこのメンバー入り当落線上を彷徨っていた2年前、この大会のスウェーデン戦でスタメンを獲得し、佐々木監督に好印象を残した。そして今年は、ボランチの成長株筆頭としてこの大会を戦うことになる。いつもは澤という先人の大きな背中を追っていたが、「もう若手ではないので!」と自身にハッパをかけて、周りの選手とも寸暇(すんか)を惜しんでコミュニケーションを取る。

 田中自身、こうしてチーム全体を牽引する役割は初めてのこと。いつも以上に視野を広げなければいけない。だが、寄せの早いノルウェーを相手に、周りがバタついた立ち上がりの悪い流れを断ち切れず、田中も迷いながらのプレイだった。

「風やピッチコンディション、長いボールを蹴ってくる相手......。難しかったです。ボールに全然触れずに、結局、自分が前に出てボールをもらいに行ったんですけど、それでも前に進めなかったので、背後へのサポートも必要だった。それでまたバランスが崩れてしまうところもあって」

 イメージはある。しかし、そこに、いつもであればいるはずの味方がいない。「周りをどう動かすか」という、ボランチの最も重要な役割を改めて実感する試合となった。だからこそ「ドイツとは絶対に対戦したい」と田中は言う。

「ノルウェーより、もっと球際が強い相手。ドイツとやりたい! 自分がどうするか、どうなるか挑戦したい」

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