【名波浩の視点】ラトビア戦の「位置づけ」はどこにあったのか (2ページ目)
後半は、ラトビアの対応が余りにもルーズになって、評価しづらい面があるけれども、遠藤保仁や前田遼一が入ったことでボールが落ち着いたのは確か。そうした中で、普段よりもうまく試合に入れていなかった前田と、少し気負い過ぎているように見えた酒井高徳以外は、出場機会の少ない選手(前半に出場した清武弘嗣や細貝を含め、乾貴士、大津祐樹など)も、自分の良さをアピールし、持ち味をしっかり出せていた。
欧州の所属クラブでは試合の出番が減っている選手であっても、代表に戻ってくれば、高いパフォーマンスを発揮できることを証明し、日頃の鬱憤を晴らせたのではないだろうか。また、試合に出ている選手も、厳しい環境の中で揉まれて溜まっていたストレスを解消する場になったと思う。もしかすると、選手たちにとってこの試合の位置づけは、そんなところにもあったかもしれない。
見ている側が期待する、サプライズもあった。岡崎慎司の1トップがそのひとつ。特にザッケローニ監督がそういう選択肢を持っていたのは、驚きだった。岡崎自身、この日のパフォーマンスにはいい感触を得られていないと思うが、点を取って結果を出すことができたし、チームとして新たなチャレンジを試みたという意味では、プラス材料として見ていいだろう。
昨年の欧州遠征でも、本田圭佑を1トップで試すなど、いろいろといじっている最前線は、現状でこのチームのひとつの強化ポイントになっているのかもしれない。前からのディフェンス面での連係も含めて、ザッケローニ監督はあらゆる組み合わせを探っている段階で、今後もさまざまな選手が試されそう。そこから、その場のコンディションうんぬんは関係なく、チームとしてのベストチョイスを見極めていくのだろう。
初招集した大津祐樹をすかさず起用したのも、目新しいことだった。3-0という展開になったり、岡崎が腰を痛めたりして、出場機会を得られる条件が重なったとはいえ、過去にはあまりなかったことだけに、いい意味でインパクトがあった。ややマンネリ化が伝えられるチームにあって、少しでも変わった面を見せたことは、いい傾向だと思う。
もちろん、細かい部分を見れば、課題もあった。ひとつひとつのプレイの精度については、改善の余地があるだろう。
とりわけ、いわゆる既存のメンバーと交代出場で出た選手とのイメージの共有がゴール前でできていない。ややチグハグな面が見られ、スムーズさを欠いていた。ミスが出たときなども、既存のメンバー同士だとうまくフォローし合えているのに、新たなメンバーが入ると動きが止まって全体の反応が遅れることがあった。そうした問題点をクリアにするためにも、互いに持っているイマジネーションを一層すり合わせていく作業が必要だろう。
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