【日本代表】豊田陽平「自分が代表に選ばれたら......」 (3ページ目)
「名古屋に入ったときは月給20万円のC契約で、“もっと稼いでやる”って気持ちだけでやっていました。冬のスポーツ紙で『××選手、年俸何千万円で契約更改』って記事を見ると、“なんでこいつがこんなもらってんだよ”と毒づきながら(笑)。山形に行くのはリスクもあったけど、“絶対やってやる”という気持ちの方が強かったですね。移籍は賭けだけど、ネガティブではない。選手としても人間としても幅は広がる。京都でも活躍はできなかったけど、勉強はできました。それは間違いなく今につながっていると思います」
彼は中学生まで、「サッカー選手になる」という夢を見ていなかった。高校受験も県内で進学率の高い公立校が本命、私立の星稜は“滑り止め”だ。しかし受験に失敗し、星稜に通い、サッカー部に入部する。上の代の先輩たちがJリーグに進んでいたことが、さらに彼の背中を押した。自然と彼のプレイも注目されるようになり、プロへの道が切り開かれたのだ。
「正直、“導かれるようにサッカー選手になったな”と感じることはありますね。小腸破裂しても続けられているわけだし、その運には感謝です。ただ、サッカー選手としての時間は限られているから、のんびりとしていられないですよ。限られた時間で常に勝負したい。夢をつかむためには、いつかまた選手として賭けに出ることも必要でしょうね。それは海外移籍なのかもしれないし、もしくは代表での試合なのかもしれません」
日本代表監督アルベルト・ザッケローニ監督が理想とするFWに、豊田は近いはずだ。
2014年ブラジルW杯を戦うザッケローニは、ウディネーゼ、ACミラン時代の長身ドイツ人FW、オリバー・ビアホフの幻影を追っている。関係者からは、「前線で強さ高さを発揮し、ターゲットとして相手を威圧するFWが理想、現役ならズラタン・イブラヒモビッチがベストだ」という声も聞こえてくる。ハーフナー・マイクを辛抱強く使い続けているのも頷(うなず)ける。
「代表選手はみんなレベルが高いから、プラスアルファを持っているかだと思います」
豊田は冷静に状況を見つめる。
「自分の場合のプラスアルファは、守備ですね。鳥栖では周りと連動しながら相手ボールを追い続け、奪ったボールをカウンターにつなげています。自分より守備の部分で動けるFWはいない。そこは選ばれたら積極的にアピールしたいですね。空中戦とかポストプレイとかは当然やらないといけない仕事。その中でFWは得点を決められるか、だと思いますよ」
結果が自分を高みに導くことを、彼は肌で知っている。
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