【日本代表】齋藤学(横浜F・マリノス)「実力が伴えばブラジルは見える」 (4ページ目)
「私はマナブに向かって『自由にプレイしろ。それだけの才能はある』と告げた。選手全員の前でね。攻撃は彼中心に組んだ戦術と言っても過言ではない」
当時愛媛の指揮官だったイヴィッツァ・バルバリッチは、特権を許すほどその才能に惚れ込んでいた。
「マナブはドリブル、パス、シュートと生まれ持ったセンスを持っている。相手の逆をつく動きは身に付いていたし、スピードも十分。私はそんな彼を試合に送り出し、奮起させるだけで良かった。若いから調子に波があったことは確かだ。でも、それは戦いを重ねる中で必ずなくなっていくはず。足りない面はあるが、例えばマナブが守備センスまで持っていたら、とっくに世界のトップクラブでプレイしている。私は彼が世界で戦えると信じ、抜擢したんだよ」
はたして、齋藤は日本代表としてブラジルW杯の舞台に立てるだろうか。
「代表は正直、あまり意識していません」と、本人は繰り返し殊勝に語る。
2012年は6得点と、J1で実質初めてのフルシーズン、並行して五輪に参加したことを考えれば、決して悪い数字ではない。あのメッシも、得点を量産するようになったのは23歳からだ。
「代表には、マリノスで自分が一緒にプレイしていた同年代の選手(ハーフナー・マイク、乾貴士、長谷川アーリアジャスールら)が大勢入っていますからね。ブラジルW杯は、実力が伴ったときに自ずと見えるはずです。自分は一生をかけて上手くなっていけばいいと思っていますから」
2013年7月の東アジア大会、日本は戦力底上げのために「日本代表Bチーム」での参加が検討されているという。海外組を除いた若手中心の構成だとすれば、五輪メンバーの齋藤は招集される可能性が高い。しかし、彼は選ばれるだけでは満足しないはずだ。
齋藤の理想とする選手は、アルゼンチン代表のパブロ・アイマールとハビエル・サビオラを足して2で割ったような選手だという。小柄ながら閃きと高い精度の技術を持ち、一瞬のスピードでゴール前に駆け抜ける。どちらも欲する青年には、やはり高度経済成長を遂げた古き良き昭和の匂いがする。
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