【名波浩の視点】ザックジャパンが世界で勝つために必要な『5箇条』 (2ページ目)

  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 いちばん差があったのは、ボールへのアプローチ、ファーストディフェンダーの質だ。ブラジルは、チェックに行ったときにはほとんど相手を捕らえるか、間違いなくパスコースを限定していた。

 対して日本は、守備ブロックの作り方が曖昧だった。アジアではそれで良かったかもしれないが、世界で戦ううえではさすがに通用しない。最初のアプローチが半歩ズレれば、その後方では一歩、さらにその後方では二歩と、後ろに行けば行くほどブロックに綻(ほころ)びが出てくる。それを避けるためにも、「ここで取りに行こう」「ここは止まっておこう」という、ブラジルのようなメリハリのある守備を実践しなければいけないだろう。

 次に違いを感じたのは、攻撃へのスイッチの入れ方と決断力だ。特に差があったのは、ボランチ。日本は、前半30分に長谷部誠がミドルシュートを放ったけれども、それを除くと、遠藤保仁、長谷部ともに、味方のボールホルダーを追い越して、相手のペナルティーボックス近辺まで顔を出すシーンはほとんどなかった。

 逆に、ブラジルのボランチふたり、パウリーニョとラミレスは、90分間の中で何度も攻め上がってきた。先制ゴールを決めたのはパウリーニョだし、後半、ゴールは認められなかったものの、ネイマールが右サイドのタッチライン際からクロスを上げたとき、ゴールネットを揺らしたのはラミレスだった。かつてのブラジルのボランチは配球役ではあったが、あくまでも守備的なMFだった。それが今や「ここぞ」というときには積極的に前に出てくる。そんなふうにして、ボランチの選手が豊富な運動量と決断力を武器にして仕掛けてきたら、日本がそうだったように、敵は混乱して、対応が遅れる。

 日本のボランチはあそこまでは出て来られないけれども、世界で勝つためには、そうした動きも今後は身につけなければいけないのかもしれない。

 攻撃のスイッチに関わることで言えば、カウンターもそう。ショートカウンターを含めて、ブラジルが仕掛けたカウンターは、ほとんどシュートで終わるか、必ずゴール前まで来ていた。その質の高さ、つまりスピード、判断の速さというのは日本とは明らかに違った。でもそれは、日本にもできることだと思う。そのためにも、ボールを運ぶ人間と、ボールに対して走っていく人間とそれぞれ、ブラジル並みの攻撃への速さと、決断力が必要になってくる。

 あとは、シュート。点差を見れば、その違いは明らかだろう。ただ、シュートの意識は日本の選手も高かった。本田圭佑にしても、香川真司にしても、常にシュートのイメージを持っていた。「相手に打たされていた」と分析する人もいたようだけれども、どんな形であろうとシュートは打たなければ入らないのだから、そこは気にせず、これからも積極的にシュートを打っていってほしい。

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