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【名波浩の視点】
ピッチの悪さを嘆く前に、五輪代表が自覚すべきこと (2ページ目)

  • photo by Akagi Shinji

 また、勝敗を分けたポイントで言えば、3枚目のカードの切り方。ゲーム終盤、前線の選手たちはかなりハードワークしていた。永井しかり、大迫しかり、山田直輝や東も攻守に走り回っていただけに、体力を相当消耗していた。引き分けも視野に入れていたとすれば、前線の4人のうちひとりをベンチに下げて、山本康裕でも齋藤学でも誰でもいいから、相手DFにプレッシャーをかけ、ボールを深追いできる選手を早く投入すべきだったのではないか。勝ちにいくのか、引き分けで終えるのか、その辺の見極めも曖昧だったように思う。

 厳しい言い方をすれば、チーム全体の勝負に対する意識が低かった。「これくらいのプレイでいいだろう」「こんな感じで大丈夫だろう」という気持ちが、選手個々はもちろん、局面ごとのプレイからにじみ出ていた。体を投げ出すところを投げ出さないとか、きっちり体を寄せるべきところを寄せ切れないとか、そうしたひとつひとつのプレイの積み重ねが、結果に出てしまったように思う。

 さて、残り2戦、同じ過ちを繰り返してはいけない。大事なことは、根本的な部分となる精神面。相手に隙を与えるような気持ちを捨てて、全力で戦わなければいけない。「5点取ろう」「10点取ろう」と言う前に、最も重要視すべきは、そこだ。だいたいこの世代は、U-20W杯予選で敗退し、アジアの厳しさを十分に知っているはず。再び悔しい思いをしないためにも、あと一歩の労を惜しまずに試合に挑んでほしい。

 あとは、自分たちのスタイル、ストロングポイントというものを把握しているわけだから、立派な大人として、その自覚を持って戦ってもらいたい。そのために必要なサポート、動き出しの早さ、時間を作る動きなど、選手それぞれが自らの役割をきちんとこなしてほしい。シリア戦では唯一、山田がボールを引き出そうといろいろと考えながらやっていたけれども、周囲のサポートがなく、彼がフリーでいられる時間を作れなかった。

 その山田や、点を取るFWの選手を生かすためにも、一層奮起してもらいたいのは、両サイドバック。やはり前線で時間を作るには、サイドのサポートが不可欠だ。後ろの選手が前に出てきて、攻める人数が増し、攻撃のスピードが上がれば、スイッチが入って一気にチーム全体のエンジンがかかる。シリア戦ではそうしたシーンがほとんど見られず、中途半端な戦いで終わってしまった。それを肝に銘じて、次戦からはチームとしてアグレッシブなサッカーを見せてほしい。

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