【名波浩の視点】
ピッチの悪さを嘆く前に、五輪代表が自覚すべきこと

  • photo by Akagi Shinji

山田直輝は攻守にハードワークを重ねて孤軍奮闘していたが......。山田直輝は攻守にハードワークを重ねて孤軍奮闘していたが......。 ロンドン五輪アジア最終予選、日本は大一番となるシリア戦を1-2で落とし、予選突破へ厳しい状況に追い込まれた。

 試合前、1トップを務めるのは大迫勇也と予想されていたが、ピッチ状態の悪さを考慮してか、先発で起用されたのは永井謙佑だった。相手の最終ラインの背後にロングボールを出し、そこに永井を走らせてチャンスをうかがう狙いがあったのだと思う。しかし、永井の反応、動き出しが今ひとつだったうえ、前線のスペースに蹴り出すボールの精度も良くなかった。結果、日本は立ち上がりからリズムをつかめず、そうした嫌なムードの中で山崎亮平が負傷。その直後に失点を喫した。

 それでも、時間が経つに連れて、ボランチの山口螢が最終ラインから効果的にボールを受けるようになり、山村和也と斜めの関係を構築。徐々にパスもつながり出して、前半終了間際に同点ゴールを奪うと、そのまま後半は日本らしい形が少しずつ見られるようになった。きちんとポゼッションしながら敵の背後を狙うという意図もあって、特に右サイドの酒井宏樹と東慶悟が、積極的に仕掛けていく姿勢を見せた。そこから、いい形が1回でも作れれば良かったのだが、結局ビッグチャンスは生まれず、逆にシリアがワンチャンスをモノにして勝利した。

 選手の判断か、監督の指示なのかわからないが、とにかく、自分たちからアクションを起こしていく、日本らしいサッカーを実践できなかったことが残念でならない。選手たちも90分間通して、ストレスを溜めながらプレイしているように感じた。非常に消極的なプレイが目立ち、相手の後ろに隠れるようなサポートばかりで、ボールホルダーがパスを出す選択肢が極端に少なかった。それでは、さすがに日本の良さは出せない。

 それを、ピッチのせいにするかどうかだが、もし仮に、遠藤保仁や香川真司がいても、同じような戦い方を選択しただろうか。おそらくA代表だったら、それはないと思う。これまでどおりのサッカーを実践したに違いない。結果論になるけれども、五輪代表もどんな状況に直面しようが、ボールをつないで自分たちのスタイルを貫いて欲しかった。それで負けたら、「やっぱり、このピッチでは通用しなかったな」という判断をしたほうがよかった。

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