【プロ野球】「なぜ打てないのか、こっちが不思議だった」 伝説の剛腕・山口高志が明かす広島打線を絶望させた68球の真実 (4ページ目)
一方、山口の投球について、広島の古葉竹識監督はこう語っている。
「山口は、最初は速いと思ったが、2、3回するとそれほどでもない。この次には捕まえられると思う」
【どうして広島打線は打てないのか】
なにより、山口自身のコメントが興味深い。
「そんなに速い球を投げているとは思わなかったのにクルクル回ってくれた。投げながら、どうして広島打線は打てないのだろうと思った」
ルーキーにして、何とも刺激的な発言である。しかし、これまで何度も話を聞かせてもらってきた印象からすると、山口は決して雄弁なタイプではない。ましてや大口を叩いたり、相手を挑発したりするような人物でもない。少々、強気に脚色されたコメントのようにも思えた。
そこで、半世紀前の発言を本人にぶつけてみると、納得のいく答えが返ってきた。
「いやいや、それは決して強気の発言じゃないんですよ。自分の投げている感じ以上に空振りが多くて、あれ!? (広島打線が)ちょっと調子が悪いのかな、調子が出てないのかな、と思っただけで」
この年の山口は、シーズン203イニングを投げて149奪三振。スピードガンがまだ普及していなかった時代だが、速さだけでなく重さも伴ったストレートの威力は、誰もが認めるところだった。ただ、全盛期の江夏豊や江川卓のように、三振を次々と積み重ねるタイプではなかった。
山口の何よりの凄みは、変化球がカーブしかなく、投球の8割前後がストレートという、いわば手の内を明かした勝負でありながら、プロの一流打者がその真っすぐを容易にとらえられないところにあった。
とにかくファウルが多かった。それでも山口は、愚直なまでにストレート勝負を挑み続けた。その姿に、ファンは大いに魅了されたのである。
そんな山口が、シリーズ初登場となった第1戦で、3回3分の2を投げて4者連続を含む6奪三振。広島の選手たちにとって、山口はほぼ初対戦。独特のダイナミックなフォームも相まって、対応は難しかったに違いない。
4 / 6

