【プロ野球】「なぜ打てないのか、こっちが不思議だった」 伝説の剛腕・山口高志が明かす広島打線を絶望させた68球の真実 (3ページ目)
山口自身も32試合に登板し、先発22試合のうち18試合で完投。残る10試合は救援登板だった。
生前の上田利治監督と、このシリーズの話題になったことがある。その際、上田はこう語っていた。
「高志には全部行くかもしれんと言うとったんです」
阪急が勝つためには、それくらいのことをしなければならない──。当時の指揮官の覚悟が、その言葉からも伝わってきた。
【初登板で見せつけた異次元の剛球】
そして迎えた第1戦。阪急は外木場義郎の立ち上がりを攻め、初回に3点を先制。足立も粘り強い投球を続け、7回を終えて3対2とリードしていた。
当時は投手の分業制がまだ明確には確立されておらず、先発完投こそが勝利への近道と考えられていた。しかし、舞台は短期決戦の日本シリーズだった。
8回表、広島が同点に追いつき、なおも一死二、三塁。ここで場内に山口の名前がアナウンスされた。第2戦の先発が濃厚と見られていたシリーズの切り札を、同点のピンチで投入する。目の前の試合を全力で取りにいく上田監督の決断だった。
その期待に応えるように、山口の剛球が唸りを上げた。
代打・山本一義には、ストレートで3度空を切らせて空振り三振。続く水沼四郎も、3球続けてファウルで粘ったものの、最後はストレートにバットが空を切った。
「あのシリーズのどこかで26球連続でストレートを投げたというのをあとで聞きましたけど、初戦のヨーイドンの8回も、カーブは1球だけやったと思います」
ひたすら真っすぐを投げ込む山口の登場で、球場の空気は一変した。
9回二死までの4者連続三振を含め、時間切れ引き分けとなった延長11回まで、3回3分の2を投げて1安打、3四球、6奪三振。試合時間4時間29分の熱戦で、広島打線を封じ込めた。
ただ、初戦の結果は引き分けだった。翌日の毎日新聞は、山口の力投を称えながらも、小見出しでは勝負の観点からシビアな見方を示している。
「阪急 痛い山口投入 広島 粘って優位に」
記事には、上田監督のこんなコメントも掲載されていた。
「足立、山口を使ってウチが損をしたと言われるかもしれないが、向こうだって外木場、金城(基泰)を使っている」
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