【プロ野球】5試合で398球を投げて日本一、そしてMVP 「車をもらったけど...」 山口高志が明かす50年前の意外すぎる後日談 (3ページ目)
山口の胸に、長く悔いを残す一戦となった。ましてや、13回表の勝ち越し点は、山口自らが放った適時打によるものだった。沢村賞投手・外木場義郎のボールを左前へはじき返したのである。
「スライダーやったんですけど、向こうはピッチャーやから、真ん中でも曲げとったら大丈夫と思うたのか、甘く来たんです。でも、あのシリーズで僕、10打数4安打なんですよ。優勝を決めた第6戦でも、最後に若生(智男)さんから西宮球場のフェンスにダイレクトで当てましたし、バッティングは好きやったですね」
投球を語る時以上に顔をほころばせ、楽しそうに打撃を振り返った。ところが、話題が13回裏の投球に移ると、途端に声のトーンが落ちた。
「あれで勝っておけばよかったんですけど、最後がね......」
あのまま勝っていれば、投げて、打って、山口の伝説はさらに輝きを増していただろう。しかし、そう簡単には終わらなかった。ここでもまた、山口らしいハラハラドキドキの展開が待っていたのである。
「たぶんあの時ね、13回のマウンドに上がって、試合後にどんなことしゃべろうかなって、一瞬、そんなことを思ったんですよ。そんな覚えがあります」
13回裏、二死一塁。あとひとりで勝利というところから安打と四球で満塁とされ、シーズン途中に南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)から移籍してきた代打・佐野嘉幸に、2ストライクからのストレートを中前へはじき返された。
ここでサヨナラ負けを喫していれば、広島が息を吹き返していたかもしれない。だが、そうはならなかった。
「打たれてすぐ、ホームのカバーに走りながら、終わった、負けた......と思ってたんです。でも、そこで福本さんがストライクの返球を投げてくれて。ああ、負けんかった、と。やっぱり余計なことを考えたらダメですね」
中堅手・福本豊の好返球で、二塁走者は本塁で憤死。間一髪、サヨナラ負けを免れた。延長13回、4時間49分。当時の日本シリーズ史上最長だった第1戦の記録を大幅に更新する死闘は、4対4の引き分け。シリーズ2度目のドローとなった。
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