【プロ野球】「松井がコケたら野球界は沈没するぞ」 広岡達朗が松井秀喜の巨人監督就任に警鐘を鳴らす理由 (4ページ目)
高橋氏もまた、巨人のスター選手として活躍し、引退直後の2016年から3年間、監督を務めた人物である。だが、監督経験があることと、すぐれた参謀になれることは必ずしも同義ではない。
広岡氏は、高橋氏個人の能力を問題にしているというより、松井氏を支える組閣が本当に適材適所なのかを問いかけているのだ。
【仲良しクラブの組閣では勝てない】
ここで広岡氏は、かつて自らに持ちかけられたこんな裏話を披露した。
「1988年のオフ、オレに巨人の監督就任要請が来たけど、断った経緯がある。その時、大先輩の千葉茂さんが『広岡を監督、ヘッドコーチに長嶋』という布陣を考えて動いていたという話がある。ファンは面白いかもしれないが、そんなのが誕生しなくてよかった。それと同じだ」
もし実現していれば、巨人の歴史に残る豪華な首脳陣となっていただろう。しかし、知名度のある人物を並べれば勝てるというほど、プロ野球は簡単ではない。
いくらすぐれた監督でも、ひとりでチームを変えることはできない。誰を参謀に据え、どのような役割を与え、どこまで権限を委ねるのか。監督を支える組織のあり方こそが、チームの未来を左右する。
広岡氏が求めているのは、仲のいいOBを集めた「仲良しクラブ」ではなく、勝つための組閣だ。
松井氏の監督就任は、巨人にとって大きな転換点となるだろう。だが、それが真の再建につながるかどうかは、松井氏ひとりの力量だけで決まるものではない。
そして最後に、広岡氏は吐き捨てるように言い放った。
「松井がコケたら、プロ野球界は本当に沈没するぞ」
それは松井氏への警告であると同時に、巨人という球団全体に向けられた言葉でもあった。稀代のスーパースターを監督に迎えたからといって、再建が約束されるわけではない。松井秀喜を真の名将に育てられるかどうか──その覚悟が、今度は巨人のフロントに問われている。
著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。
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