「軟球なのに怖かった」 阪神・髙橋遥人の知られざる中学時代 ブルペン捕手を震え上がらせた衝撃の30球 (2ページ目)
なんや、中学生かいな......。以前、『中学野球小僧』という雑誌で、「中学版・流しのブルペンキャッチャー」という連載を長く続けていたことがある。ヤクルトで活躍する清水昇の駿台学園中(東京)時代のボールなども受けたが、スピードにしても捕球時の衝撃にしても、高校生の剛腕には及ばなかった。
とはいえ、せっかくいただいた話だ。静岡へと向かった。庄司も投げていたブルペンに、髙橋が立った。シルエットはまだ細い。顔立ちもやさしげで、この少年のどこに「モノの違い」があるのだろうか。そんなことを思いながらミットを構えた。
【軟球とは思えない衝撃と恐怖】
立ち投げの1球目だった。リリースが見えなかった。テイクバックで、ボールを握った左手が体の後ろに隠れたかと思った次の瞬間、ビュッと来た。ミットの手のひらの部分で、やっと捕った。
手のひらで受けたから、痛かった。硬球を受けたような、「パーン!」と来る痛さ。軟球だよな......と、受けたボールをあらためて見てしまったほどだ。
左手をふんわり後ろに引いてから、ビュッと来るまでに「間(ま)」がない。それでいて、左腕がこちらに向かって、まるでゴムのようにビョーンと伸びてくる。こちらの鼻先あたりでボールを放されているような感覚だった。
軟球を受けて、初めて「怖い」と思った。
ロッテの横山陸人だって、上一色中(東京)時代に140キロは超えていただろうが、怖いと思ったことはなかった。しかし、髙橋のストレートは明らかに「質」が違っていた。ヘタしたら、死ぬかもしれない......。そこまでの「凶暴性」を秘めたボールだった。
なのに、フォームはゆったりと穏やか。キャッチボールでもするような自然体でモーションを起こし、いきなりビュッと来る。その一瞬だけが、恐ろしく速い。
正面から見ているキャッチャーでさえ、これだけミットが遅れるのだ。打席に立ち、斜めから投球を見るバッターにとっては、どれほど見にくく、タイミングを測りづらいことか。
ピッチャーは「MAX〇〇キロ」という数字だけがすべてじゃない。ボールの出どころ、腕の振り、リリースまでの間、そして打者の体感速度。球速表示には表れない、投手の価値の本質を、まだ中学生の軟式左腕が教えてくれた。
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