【プロ野球】阪神・及川雅貴、悪癖を武器に変えたフォーム革命「受け入れたら感覚がよくなった」 (3ページ目)
【目標は誰からも信頼される投手】
7年前のドラフト時を振り返り、私が「こんな繊細な選手が阪神に入団して大丈夫だろうかと心配になりました」と打ち明けると、及川は苦笑交じりにこう答えた。
「自分はとくに考えていなかったです。阪神に決まった時も、『関西の人は気持ちをストレートに伝えてくる』というのと、『言葉遣いが少し荒っぽい』と思ったくらいで。関東とは文化が違うので、多少の不安はありましたけど」
今年の4月で25歳になる。まさに野球選手として旬を迎えたと言っていいだろう。及川は昨季後半に見つけた課題の克服に取り組んでいる。
「昨年は後半戦に入ったところで平均球速や球威が落ちたと感じる時期がありました。そういう時に変化球で逃げたくなってしまうので、そこは改善したいですね。球数が増えても威力が落ちない球質を求めつつ、年間通してバランスのいいフォームで投げること。それを求めていきたいです」
10年前におっさんを侮って手痛い一撃を食らった中学生は、今や最高峰の世界で輝きを放つプロフェッショナルへと進化していた。これからどんな人間になっていきたいか。最後にそう尋ねると、及川は少し考えてからこう答えた。
「そんなに大きなことは言えないですけど、でもずっと言っていることがあるんです。誰からも信頼してもらえるピッチャーになりたい。たった1年だけじゃなく、2年、3年......といい成績を続けていくことが、一流のプロ野球選手だと思います。厳しい世界なので、簡単ではないんですけどね」
誰からも信頼されるピッチャーになりたい──その思いは、匝瑳シニアに在籍した中学時代から口にしていたような気がする。私がそう漏らすと、及川は「そうかもしれません」と笑った。
「勝ってるところはとくにない」
かつてそう漏らした面影はない。たくましくなったサウスポーは、確かな信頼を勝ち取るために今日も腕を振る。
及川雅貴(およかわ・まさき)/2001年4月18日生まれ。千葉県出身。横浜高校では1年春からベンチ入りし、最速153キロの速球とスライダーを武器に世代屈指の左腕として注目を集め、「高校BIG4」のひとりに数えられた。19年ドラフト3位で阪神に入団。プロ入り後は制球力と投球フォームの安定を課題にしながら経験を積み、リリーフとして頭角を現す。キレのあるストレートと変化球を武器にブルペンの一角を担い、試合の流れを引き寄せる役割を担う左腕として成長を続けている
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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