検索

【プロ野球】阪神はなぜ強くなったか? 元スカウトが証言「金本知憲監督になって明らかにドラフトが変わった」 (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── 阪神OBの田淵幸一さんも、優勝の要因のひとつとして「球団のスカウティングがよくなったことが大きい」と話していました。

熊野 FAやトレードで選手を獲得することも大事ですが、やはりチームを強化するうえで最も重要なことはスカウティングと育成だと思います。昨年のドラフトで1位指名した伊原陵人、2位の今朝丸裕喜のふたりは、私の担当でした。伊原は1年目から28試合に登板するなど頑張ってくれました。最後に少しだけ貢献できたかなと思います。

【スカウトは投手と打者の「どこ」を見るのか】

── 「ドラフト候補生」がスポーツ紙や雑誌を賑わせますが、「プロで活躍するかどうかを見分ける」のは、また別物だと思います。どこを見るのですか。

熊野 投手を見る時は、まず体つきから始まり、投球フォームやヒジの使い方、特に柔らかく使えているかどうかをチェックします。そこからコントロールの良し悪しや、ケガをしにくいフォームかどうかも見極めます。重心が高いと球が浮きやすくなるんですよ。見誤りがないように、複数のスカウトで確認する"クロスチェック"も行なっています。

── 打者はいかがですか?

熊野 ポイントはスイング軌道です。バットがしっかり内側から出ているかどうか、そしてタイミングの取り方が変化球に対応できるか。そのあたりを重視して見ます。技術的な部分は、普段の試合や練習のなかで十分に観察できますし、球団ごとに独自のチェック項目があり、それに基づいて採点する仕組みになっています。

── 性格などはいかがですか?

熊野 高校生や大学生が「プロ志望届」を提出すると、球団スカウトは12球団共通の「調査書」(いわば野球版の身上書)を学校に持参します。そこには「走力タイム」や「プロ野球への関心度」、「性格自己分析」などの項目があり、選手本人に記入してもらいます。その内容はスカウト会議で共有されます。また、その学校を訪問した際には、選手と簡単な面談を行ない、監督からも話を聞いて、おおまかな性格や人柄を把握するようにしています。

熊野輝光(くまの・てるみつ)/1957年8月28日生まれ。香川県出身。志度商から中央大、日本楽器を経て、84年ドラフト3位で阪急(現・オリックス)に入団。1年目から118試合に出場し、14本塁打を記録し、新人王に輝く。92年、トレードで巨人に移籍。93年に戦力外となり、94年にテスト入団でオリックスに復帰するも、同年限りで現役を引退。その後、オリックス二軍コーチ、スカウトを務め、巨人、阪神でも長くスカウトとして活躍した。2025年から香川オリーブガイナーズの監督に就任

フォトギャラリーを見る

4 / 4

キーワード

このページのトップに戻る