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【プロ野球】ケガなき1年を過ごしたヤクルト・奥川恭伸に訪れた次なる試練 「今のままでは抑えられない」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 しかし、その後は苦しいピッチングが続くことになる。開幕から5試合で0勝3敗、防御率5.61。5月4日には成績不振により、一軍登録を抹消された。

「開幕で勝てなかった。2戦目、3戦目に打ち込まれた。勝ちたい、勝てない、勝ちたいから点をやれない、やれない意識が強くなると、大量失点になってしまう。その繰り返しというか、打たれる怖さもあって、自信を持ってマウンドに立てなかったです」

【石川雅規からのアドバイス】

 5月の戸田では「いろいろありましたね。たくさんアドバイスを聞きましたし、何かきっかけがほしかったので外部のトレーニング施設に行ってセッションを受けたこともあります」と、活路を見出すのに必死だった。

 また石川雅規とのキャッチボールでは、「平地だとうまくいくんですよね」と話すと、「これを傾斜でどう生かすかだね」と助言をもらい、そのままブルペンに入ったこともあった。

「石川さんは『平地でいいボールを投げる人はたくさんいるけど、ピッチャーは傾斜を制してナンボだから』って。それはずっと言われていて、あとは『傾斜で投げている量が少ないんじゃないか』とも。それもあって、登板間のピッチングはそれまで傾斜で投げるのは一回だったんですけど、キャッチボールのあとにけっこう入れるようにしました」

 そんな時間のなかで、「奥川にこんな一面があったのか」と思わせる場面も何度かあった。キャッチボールで感触がしっくりこないと、がっくりと肩を落とす。そのまま力なく歩いている姿をチームメイトに冷やかされると、「オレはこういう人間なんだよ」とやさぐれた。

「シーズンに入る時って、少しは自分に期待するじゃないですか。規定投球回に近いイニングを投げたい、そうすれば2ケタ勝利も見えてくる......そんなふうに思っていたんです。でも、それが完全に打ち砕かれてしまって。ケガで投げられなかった時期のことを思えば、『こうして投げて悩めることは幸せだよ』というアドバイスももらいましたけど。正直、どっちもつらいですよ、って。そんな感じでしたね(笑)」

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