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「もうええわ」宮西尚生は絶体絶命のピンチでこそ開き直れる 「リリーフのセンス」の正体 (4ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 それでも2020年には、再びチーム事情で抑えを務める時期があった。その経験がセットアッパーで生かされた部分はあるのだろうか。

「精神的にクローザーはきついなとわかってから、中継ぎで3点リードで登板したら、1点も取られずにクローザーに渡してあげたいと思うようになりました。以前は、状況的に1点は仕方がないところで簡単に点をあげてたんですけど、1点でも多く(リードしたまま)渡してクローザーのメンタルを楽にさせてあげたい、という思いがより増しましたね」

 中継ぎに徹して第一線で投げてきたなか、2015年10月、18年11月、22年9月と3度の左ヒジ手術を経験している。数年前まで体の状態はよくなく、"負け"で投げる機会も増えていた。だが、現監督の新庄剛志に「楽しむことで状態も上がってくる」と助言され、考え方を「180度以上変えた。責任を背負い込むのではなく、楽しむ野球を目指し始めたら、結果も出るようになった。

「次は岩瀬さんの1000試合だって言われますけど、そこの数字に対してはまったく興味ないです。それよりもホールドのつくセットアッパーで投げ続けて価値がある、最後まで戦力として"勝ち"に貢献できる場面で投げての登板数っていう認識なんで。目先の1試合を必死に戦って、戦力として楽しんでやっていく。これからもそのための"1登板"を目指していきます」

(文中敬称略)

宮西尚生(みやにし・なおき)/1985年6月2日生まれ。兵庫県出身。市尼崎高から関西学院大を経て、2007年大学・社会人ドラフト3位で日本ハムに入団。プロ入り1年目から14年連続50試合以上登板を果たすなど、チームに欠かせない戦力として活躍。16年には史上2人目の200ホールドを達成。24年には前人未到の400ホールドを記録し、25年5月15日のオリックス戦では880試合連続救援登板の日本記録を達成。また9月23日の楽天戦で史上4人目の通算900登板を達成した。

著者プロフィール

  • 高橋安幸

    高橋安幸 (たかはし・やすゆき)

    1965年、新潟県生まれ。 ベースボールライター。 日本大学芸術学部卒業。 出版社勤務を経てフリーランスとなり、雑誌「野球小僧」(現「野球太郎」)の創刊に参加。 主に昭和から平成にかけてのプロ野球をテーマとして精力的に取材・執筆する。 著書に『増補改訂版 伝説のプロ野球選手に会いに行く 球界黎明期編』(廣済堂文庫)、『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』(集英社文庫)など

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