「もうええわ」宮西尚生は絶体絶命のピンチでこそ開き直れる 「リリーフのセンス」の正体 (2ページ目)
<それまで「大事に」と思っていたが「もうええわ」と思った。3ボール2ストライクになったほうが打ち取れると思った。今年はスライダーでここまでやってきた。スライダーを信じて投げた>(スポーツニッポン 2016年10月27日)
球種は真っすぐとスライダーの投手が、大舞台の絶体絶命のピンチで強打者に対し、スライダーを続けた。その徹底した投球に加え、画面に映る宮西の鬼気迫る表情が筆者には強く印象に残り、今も忘れられない。
「あれは僕のなかでもナンバーワンの出来ですね。満塁にされた内容は別として(笑)、最後、丸選手との対戦は、教わってきたこと、経験してきたことが全部詰まった投球でした」
カウント2−2となり、あえて3−2にしたのは開き直りもあっただろうが、満塁で3−2にするのだ。次の1球で仕留められるという絶対の自信がないと、できそうにない。
「2−2だと、バッターは甘く入ると打ってくる。でも、3−2になると、満塁なんでフォアボールを選びたいという心理も働く。とすると、3−2のほうが勝負になると僕のなかでは思ったんです。それで、フォアボールを出しても同点、まだ負けるわけじゃないっていうリリーフ勘ですね。
スライダーを続けるのは決めていました。『フォアボールは出したくないはず』ってバッターは思うだろうし、真ん中から外に逃げていけば振るっていう確信があったというか、じつは直感なんですけど。それは若い時に吉井さんから言われてたんで」
【ベテランの直感は当たる】
宮西が入団した当時の投手コーチで、2016年に復帰した吉井理人の助言だった。「迷った時には冷静になれ。そこで直感が働いた時は、経験すればするほどその直感は当たる。ルーキーの子の直感とベテランの直感では、ベテランのほうが絶対に当たる」と言われた言葉がインパクト大だった。同年の宮西はプロ9年目、「直感が当たる」だけの経験を積んでいた。
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