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「もうええわ」宮西尚生は絶体絶命のピンチでこそ開き直れる 「リリーフのセンス」の正体 (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 リーグ優勝には2009年、12年と貢献していたが、日本一は初。さらに自身初タイトルとなる最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、積み上げたホールド数はその時点でパ・リーグ歴代最多の232。2度目のタイトルを獲った2018年には、山口鉄也(元・巨人)が持つ通算ホールド数の日本記録273を超えた。セパ両リーグでホールドが採用されて以来、14年目のことだった。

「ホールドはセーブよりも歴史が浅くて、いつも何か耳に入ってくるのは、『歴が浅いから比べられない。その記録が本当にすごいのか』っていうような言葉です。昔は葛藤もありました(笑)。だからホールドという記録の価値を上げないといけないっていう思いもあるし、山口鉄也さんの記録を抜かせていただいてからは、自分が責任を持って稼がないといけないと感じていました」

 中継ぎ投手も当然、チームの勝利に貢献することが第一。だが宮西の場合は、記録の価値を上げることへの意識も相当に高い。そんな自分自身を「変わってるタイプ」と表現するが、ホールドへの意識もファンのためなのだ。今や宮西自身がホールドの歴史を深め、由緒ある記録にしている最中、と言っても過言ではない。

「岩瀬(仁紀)さんの登板数にしろ、山口さんのホールド数にしろ、僕の場合はそういう数字があったからこそ、辛い時でも乗り越えられたんです。そういう意味では、若い人にとって目標となる数字を、今度は自分がつくらないと......という思いもあります」

【セットアッパーの矜持】

 若い人の目標、という面では、現役でホールド数200を超えている投手はいない。セットアッパーから抑えになる投手が多いこともあるが、宮西自身、抑え願望はなかったのだろうか。

「クローザーは真っすぐが速くて、フォークピッチャーっていうイメージが強くて。また、ファイターズにはそういうピッチャーがいたんです。だから7回、8回で左をメインとしたところ、中軸をメインとしたところに入る、もしくはワンポイントっていうのがチームとして一番いいと思っていたし、自分でも一番輝くところだと思っていたんで、クローザー欲は今までなかったですね」

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