【プロ野球】150キロ投手が続々と誕生する理由 オリックス3連覇を支えた中垣征一郎が語る投手育成と球速アップの真実 (3ページ目)
最たる例が、中継ぎで台頭する投手だという。先発するには球種が少なく、精度も高くないが、リリーフであれば、速い真っすぐと得意の変化球ひとつで機能できる投手。真っすぐと変化球とのコントラストを生かして1イニング、ゲームをつないで勝ちにつないでいける。まさに、リリーフでレベルの高い投手が増えたという現場の声に通じる話だ。
「先発ピッチャーをチームのなかで育成するのは、打者が出てくるのと同じようにものすごく大変なテーマだと思います。もちろん、リリーフで出てくるのも決して簡単ではない。『リリーフピッチャーのほうが育成しやすい』という話ではまったくないんですけど、確率としては以前より出やすくなっているのかな、とは思いますね」
【球速アップするがゆえのリスク】
簡単ではないという意味では、中継ぎで急台頭して活躍しながら、翌年は不調に陥る投手も散見される。実際問題、5年、10年と好成績を続けられるリリーフ投手はほとんどいない。それは先発投手もしくは野手が、長く活躍することと同様に難しい課題。まして、速い投手には速いがゆえの故障の懸念もあるという。
「最大値が145キロだったピッチャーの球速が150キロ台後半に上がったとします。そうすると次の登板までに回復できていたはずの歪みが、じつは回復できていないまま次の週に持ち越したり、リリーフで次の登板に持ち越したり......ということが起きやすくなるとは思うんですね。じゃあ、その歪みの影響を1回、1回、1球、1球、すべてを本当にデータ化できるかといったら、これはおそらく、どこまでテクノロジーが発達しても容易ではないでしょう」
球速が上がっている投手の故障を防ぐため、オリックスでは各部署と連携。留意点を逐一チェックし、必要なトレーニングの内容を選手に伝えていた。だが、四六時中、選手について回って、伝えたことを実践しているか否か確認できるはずもない。実践していたとしても、それで万全か、1回、1回のトレーニングのなかで検証しきることはどこまで可能だろうか。
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