名審判・小林毅二が語る監督・長嶋茂雄の記憶 「選手の気持ちは大事ですから、簡単に引き下がるわけには...」 (3ページ目)
── この1994年の巨人と西武の日本シリーズは、どんなことを感じましたか。
小林 巨人は第1戦こそ大敗を喫しましたが、「10・8決戦」の勢いそのままに、いい流れで日本シリーズに突入できたのではないでしょうか。
── 長嶋監督の日本シリーズで言うと、2000年の王貞治監督率いるダイエー(現・ソフトバンク)との「ON対決」も注目を集めました。あの時も第1戦の球審は小林さんだったのですね。
小林 「10・8決戦」の時と同じで、マスコミが騒ぎすぎの面もあったと思います(苦笑)。でも、それだけ野球界にとっては特別な日本シリーズだったということですね。
── 巨人の第1戦先発は、前年ダイエーを優勝に導いた工藤公康投手でした。
小林 2回に、昨年までバッテリーを組んでいた城島健司に内角低めのストレートを本塁打されました。ただ、あの時点ではまだマウンド上で苦笑いする余裕がありました。しかし7回、松中信彦に完璧な2ランを打たれた時は、かなり痛恨の表情を浮かべていましたね。
── この日本シリーズでも、巨人が4勝2敗でダイエーを倒して日本一に輝きました。結果的に、長嶋監督は2回日本一を達成していますが、いずれの日本シリーズも第1戦の球審は小林さんなのですね。
小林 もちろん、たまたまそうなっただけですが、長嶋監督の2度の日本一に関われたことは光栄ですね。
【グラウンドで交わした忘れがたい時間】
── 長嶋さんは1974年のシーズンを最後に現役引退。小林さんは1972年にセ・リーグの審判員になられます。最初の接点はどこだったのでしょうか。
小林 それこそ長嶋さんの現役最終年の1974年、私がプロ審判員となって2年目です。甲府でのオープン戦で私は一塁審を務めました。職業上、選手と審判員はむやみに会話することはしませんが、そのなかでも長嶋さんはペーペーの審判員にとって口も聞けない"神様"のような存在でした。
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