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栗山英樹が振り返るたった一度の根本陸夫との面会 「キミをオレの下につけて、オレみたいなことをやってもらおうかなと」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「もともとは僕が辞めるってなった時、根本さんが『西武に来い』と言っていると聞いたんです。まったく面識がなかったので驚いたんですが、僕の恩人が共通の知人だったようで、その方を介して。

 ただ正直に言うと、そのとき一瞬、西武が獲ってくれるのかもしれないと期待したんです。野球選手としては、じつはその思いが強かった。でも、そうじゃなくて指導者のようだと聞いて『ああ、オレは選手としてもうダメなんだ......』と思ったんですね」

 そう語る栗山は、当時まだ30歳だった。創価高、東京学芸大を経て、84年にヤクルトに入団。プロテストを受けてのドラフト外だったが、俊足巧打の両打ち外野手として86年に頭角を現す。自身初めて規定打席に達した89年にはゴールデン・グラブ賞を受賞した。

 だがその翌年オフに引退を決意したのは、ケガと病気が重なった影響だった。それだけに、新天地での現役続行への思いが頭の片隅に残っていた。だから西武でプレーする道もない以上、翻意することもなく、やむを得ず断りを入れた。

 とはいえ、ほかでもない根本からの誘いを断ったのだから、声をかけてもらったことへの感謝の気持ちを直に伝えたい。そう考えた栗山は、西武関係者を通じて対面を頼み込んでいた。

「初めてお会いして、まず、野球界の人っていう感じじゃないオーラがありました。いい意味で違う世界の大親分のような、ヤクザっぽい風情があって、思わず背筋が伸びましたね」

【自らの後継者として栗山英樹を指名】

 根本は、すでに栗山が断りを入れたことを何も知らないかのように口を開いた。

「どうなんだ?」

「すいません。一回、いろんなことを勉強したいので、ひとつの球団に入るよりも、広く野球を勉強するためにはメディアに入ったほうがいいと思っているんです。本当にすいません」

「いやいやいや、何も謝ることはないよ。キミをオレの下につけて、オレみたいなことをやってもらおうかなと思ってたんだよな」

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