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独立リーグを人材の宝庫に変えた男、茨城アストロプラネッツ前GM・色川冬馬の次なる挑戦の舞台はMLB球団 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 首脳陣では監督が中心になり、各選手を伸ばすためにコミュニケーションを密にはかっていく。コーチを含め、指導のスペシャリストを適材適所で集めるのがGMの役割だ。そのうえでチームの意思決定者として責任を負い、各選手がフィジカルやコンディション、技術の状態はどうなっているのかを首脳陣と一緒に見ながら個々を伸ばしていく。

【チーム内の環境をあえて変える】

 チームづくりにおけるアストロプラネッツ独特の環境が、元メジャーリーガーなど経験豊かな外国人選手を加入させてきたことだ。その裏には、「選手たちをコンフォートゾーンに入れない」という目的もある。色川氏が語る。

「独立リーグは年間運営費で言うと、NPBの100分の1の世界です(※NPBは約100〜200億円、独立リーグは約1〜2億円)。僕らがコンフォートゾーンに入って、慣れが来たら終わり。だから、選手には常に居心地の悪い組織であろうとしてきました」

 たとえば試合でヒットを打ったら満足したくなるが、同じチームの外国人選手がもっと鋭い打球を放っている姿を見れば、「自分はもっと練習しなければ」と感じるはずだ。

 好例が、2021年に加入した右腕投手セサル・バルガスだった。身長188センチの長身で、鍛え上げた胸板はぶ厚い。ストレートの最速は159キロで、常時148〜152キロを記録する。さらにスライダーとカットボール、シンカーを操り、先発投手を務めるスタミナもある。

「周りの選手にすれば、『このクラスがNPBに行っていないの?』と感じると思います。次のレベルを目指すうえで、ロールモデルになりますよね。『このレベルの選手が来たら、自分の居場所はなくなる』と感じれば、『自分も成長し続けない』といけないと危機感を抱く。そういう組織づくりをしていきました」

 以上のようにチーム内の環境を変えることで、アストロプラネッツは人材供給源へと生まれ変わった。結果、5年連続でドラフト選手を輩出し、近年は支配下でも指名されるようになった。

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