阪神・藤川球児監督は指揮官として成功するのか? 広岡達朗が危惧する守備力の意識とヘッドコーチ不在 (3ページ目)
ピッチャーは、現役中なら一匹狼でも問題はない。しかし、指揮官になったなら『オレの考えは絶対に正しい』では困る。多種多様な選手をまとめ上げるには、コーチ陣やフロントとの連携が不可欠になる。優勝するためには、優秀なヘッドコーチが必要だと常々言っているのだが......。
今の阪神には正式なヘッドコーチが不在で、藤本(敦士)が総合コーチとしてその役割を担うようだが、はたして機能しているのか。ヘッドコーチは、監督に対しても遠慮なく意見できる人物でなければならない。もし何も言えないなら、チームとして危機的状況だ」
過去の名将たちには、必ずすぐれた参謀がいた。川上哲治には牧野茂、星野仙一には島野育夫、王貞治には黒江透修、落合博満には森繁和、そして広岡自身もヤクルト・西武時代に森祇晶という優秀な参謀を持っていた。
監督としてのビジョンは重要だが、現実は理想どおりには進まない。掲げたビジョンが崩れた時、迅速に軌道修正できるかどうかが指導者の力量を決める。
「藤川は監督やコーチの経験がない。それを承知のうえで球団は監督に据えたのだから、しっかりとしたサポートが必要だ。しかし阪神のフロントは、現場任せの体質が強い。もし藤川がベテランコーチの補佐を拒否したのなら、それは大問題だ。勝っている時は勢いが出るが、負け始めた時に一気に崩壊する危険がある」
藤川新監督率いる阪神は、順調にシーズンをスタートできるのか。今後の動向に注目したい。
(文中敬称略)
広岡達朗(ひろおか・たつろう)/1932年2月9日、広島県生まれ。呉三津田高から早稲田大に進み、54年に巨人に入団。1年目からショートの定位置を確保し、新人王とベストナインに選ばれる。堅実な守備で一時代を築き、長嶋茂雄との三遊間は球界屈指と呼ばれた。66年に現役引退。引退後は巨人、広島でコーチを務め、76年シーズン途中にヤクルトのコーチから監督へ昇格。78年に初のリーグ優勝、日本一に導く。82年から西武の監督を務め、4年間で3度のリーグ優勝、2度の日本一に輝いた。退団後はロッテのGMなどを務めた
著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。
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