名コーチ・伊勢孝夫が指摘する今のカープに決定的に足りないもの 大失速からの再起はなるか? (2ページ目)
結局、技術や作戦以前に、選手のメンタル面が影響を及ぼしたのだろう。実際こうなってしまうと、悪循環を止めるのは難しい。シーズン中、どのチームにも起こりうる"病気"のようなものだが、広島は不運にも大事なシーズン終盤にこの症状が出てしまった。
【長打力ある日本人選手の育成】
ただ、あらためて振り返ると、やはり外国人打者が合わせてホームラン1本という数字が示すように、この攻撃力では厳しい。これでは勝負にならないというのが、私の考えである。投手陣の信頼を回復させるだけの打力を向上させる必要がある。
しかし、日南キャンプで見た限り、残念ながら大きな期待を寄せられる打者は見当たらなかった。藤井彰人ヘッドコーチはふたりの新外国人選手に期待を寄せていたが、現時点で活躍するという保証はどこにもない。
日本にやってくる外国人選手は、大きく分けて2つのタイプがある。
1.メジャー昇格の可能性が低くなり、日本で稼ぐことを目的に来る選手
2.出場機会を求め、日本で結果を残してメジャー再挑戦を狙う選手
1は日本の野球に適応できるかがカギであり、活躍するかどうかは紙一重。一方、2は意識が高く、さらに25歳前後の若手だと吸収力があり、日本で成功する要素を持っている。
広島は伝統的にハングリーな外国人選手を獲得する球団として知られているが、近年は当たり外れが多い印象だ。外国人選手がうまく機能すれば得点力アップは見込めるが、外れれば昨年のように得点力不足に悩まされてしまう。
では、得点力向上の打開策は何か。まずは長打力のある日本人打者の育成だ。昨年のチーム本塁打数は52本と12球団最少で、大谷翔平が放った数(54本塁打)よりも少なかった。相手バッテリーにプレッシャーをかける意味でも、長距離砲は必須である。
チームの主砲を任せられそうな選手を探していたら、ティーバッティングでの末包昇大の打球音はほかの選手と明らかに違った。昨年はケガもあって79試合の出場にとどまったが、フル出場すれば20本塁打以上は十分に期待できる打者だと思う。彼のような長打力のある打者が打線の中心に座れば、自ずと得点力が上がるはずだ。
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