名コーチ・伊勢孝夫が指摘する今のカープに決定的に足りないもの 大失速からの再起はなるか? (3ページ目)
【起爆剤となりうる選手がほしい】
そしてもうひとつは、長打、アベレージとも突出したものはないが、どちらも平均的な数字を残せる選手がいる。わかりやすい例を挙げるなら、ヤクルトの塩見泰隆のような選手だ。一発に頼らなくても、こうした選手を複数育てることで打線の軸ができて、得点力アップが期待できるわけだ。
とはいえ、今の広島打線を見ると、遠くに飛ばせる選手の育成は急務だ。そこはドラフト戦略から見直すべきかもしれない。遠くに飛ばすパワーというのは鍛えればなんとかなるが、飛ばす感覚、ボールを捉える感覚というのは、なかなか教えられるものではない。
もともと広島は足と肩のある選手を重視する傾向があるが、一発が打てる選手を何人か獲ってもいいのでないか。足の速さというのも、打線に一発の怖さがあってはじめて効果を発揮するのだ。怖さのない打線では、機動力は発揮しづらい。とにかく、今の広島打線に必要なのは、起爆剤となりうる選手だと思う。
また、二軍の天福球場にも足を運んだが、汗を流すベテランたちの様子が気になった。田中広輔、松山竜平、上本崇司、會澤翼......。昨年は早い段階から3月中旬には一軍に合流すると伝えられていたそうだが、今季はまだそうした話はないという。つまり、ベテランであっても「力がない者は一軍に上げない」という新井貴浩監督の決意が感じられた。
おそらく、小園海斗、矢野雅哉、末包といった若手を中心に、チームを根本から変えようとしているのだろう。
評論家が1日視察しただけで何がわかるのか、という意見もあるだろう。もちろん否定はしない。しかし、たった1日でも明確に伝わってくるものはある。はたして、広島はどのようなチームになっていくのか。新井監督の采配に注目したい。
著者プロフィール
木村公一 (きむらこういち)
獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。
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