岩隈久志から見た田中将大は「本来のピッチングに近づいている」 巨人での200勝達成に向けた改善点は? (3ページ目)
――岩隈さんから見て、田中投手の"復活"には何が必要だと思いますか?
「ここ数年は思うような結果が出せずに、不本意なシーズンを過ごしていたかもしれません。その要因のひとつは、ボールのキレが落ちたことにあると思っています。
2024年に関しては、一軍の登板はわずか1試合に終わりましたが、二軍では5試合に投げていますし、最後の登板(9月13日)は、7回98球を投げて3失点(自責点2)の内容でした。その際には、手術の影響で思うように腕が振れないなかでも球速は十分に出ていましたし、身体の使い方や巧みなコントロールに関しても、本来のピッチングに近づいているように感じました。
来季の開幕を迎える頃には、手術のことを気にせずに投げられる状態まで回復しているでしょう。あとはボールのキレをもう少し改善できたら、十分に戦力になり得ると思います」
――岩隈さんは田中投手と楽天で5年間に一緒にプレーしていました。ルーキー時代からこれまでの歩みをどのように見ていましたか?
「田中投手が入団した2007年は、僕が怪我をしていたこともあって会話をする機会はさほど多くありませんでした。ただ、まだまだ荒削りな1年目からふた桁勝利(28試合登板、11勝7敗、防御率3.82)を挙げる姿や、投球時の気持ちの強さに驚かされたことを覚えています。
若い頃はいつも全力で投げていましたが、経験を重ねるなかで"勝つための投球術"を身につけている印象がありました。特に、力を入れる場面と抜く場面の切り替えがとても上手で、ピンチになると全力投球に切り替えて、ほとんどの打者が打てないようなボールを投げ込んでいたのが記憶に残っています」
――あらためて、来季の田中投手への期待を聞かせてください。
「巨人を新天地に選びましたが、再び一軍のマウンドで活躍して日米通算200勝を達成してくれると信じています。目標に向かうその姿を、全力で応援します」
(後編:佐々木朗希のメジャー挑戦を語る 重視される「イニング数の多さ」をクリアできるのか>>)
【プロフィール】
岩隈久志(いわくま・ひさし)
1981年4月12日生まれ。1999年にドラフト5位で近鉄に入団。2年目に初勝利、2003年に15勝を挙げるなどエースとして台頭。2005年には楽天に移籍して初代開幕投手を務めた。日本球界で通算107勝、沢村賞1度、最多勝2度など多くのタイトルを獲得。2012年にメジャーリーグのマリナーズに移籍し、7年間で63勝をマーク。2015年にはノーヒットノーランを達成した。2018年オフに巨人に移籍して日本球界に復帰し、2020年シーズンをもって現役を引退。2021年にマリナーズの特任コーチに就任。同時に、中学硬式野球チーム「青山東京ボーイズ」のオーナーを務めながら指導を行なっている。
著者プロフィール
白鳥純一 (しらとり・じゅんいち)
ライター。ソウ・スイート・パブリッシング所属。WEBサイト「キングギア」でのライティングをきっかけに取材活動を開始。スポーツの取材やインタビュー記事を中心に執筆を続けている。
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