【プレミア12】井端ジャパン4連勝でスーパーラウンド進出 絶体絶命のピンチで見せた藤平尚真の成長の証 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 一死満塁の大ピンチ。メジャーリーグで9年のキャリアを誇る左打者ヨアン・モンカダを打席に迎えた。

 ストレートを2球つづけた藤平はいずれも外したが、それでも頭のなかは冷静だった。

「真っすぐも若干浮いていました。ちょっと高めに吹けるというより、低めを狙って高めにいくことがあったけど、そこはクイックピッチでしっかり下から動いて(リリースを)合わせていけば大丈夫かなと」

 決め球のフォークが抜けていたなか、バッテリーはスピンの効いたストレートで押した。3、4球目は高めのストレートを続けて空振り、ファウルで追い込むと、5球目は捕手の佐藤都志也(ロッテ)が構えた内角高めに153キロを計測し、モンカダを見逃し三振に仕留めた。

【失わなかった冷静さ】

 二死満塁。打席に迎えるのは、途中出場で8回にセンター前安打を放っている右打者アンディ・コスメ。

 藤平は150キロ台のストレートを4球つづけて2ボール、2ストライク。5球目は内角高めにストレートを投じると、コスメはファウルで粘った。

 全体的にストレートに強さを見せるキューバ打線に対し、藤平はモンカダの打席から10球つづけて真っすぐを選択している。はたして、最後まで力勝負を貫くのだろうか。

 雨が強まるなかで4955人の観客が固唾を飲んで見守っていると、コスメは打席を外した。バットに滑り止めのスプレーを吹きかけながら、ひと呼吸入れる。

 藤平もマウンドを外し、後方で屈伸しながら頭のなかを整理した。

「ああいう間(ま)は雰囲気がちょっとずれる感じがして、すごく嫌でした。まず(佐藤)都志也さんがフォークを出すんだったら、(リリースを)合わせにいっても絶対に浮くと思ったんで、しっかり腕を振ってベース板の上に投げること。真っすぐを投げ切るんだったら高さは気にせずに、アウトコースとインコースのどっちが出ても、コースだけしっかり意識して投げれば絶対大丈夫って思いました」

 最初は「嫌な間」だと感じたが、すぐにやるべきことを冷静に見直した。

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