【侍ジャパン】プレミア12に挑む若き投手陣 なぜ井端監督は「一番驚かされたピッチャー」として北山亘基の名前を挙げたのか? (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

【毎朝、自分の体をチェック】

 北山はウエイトトレーニングに励まずとも、最速156キロの強いボールを投じる。以前、ムキムキの肉体が話題になったこともある。山本のブリッジの動画を見ればわかるが、ある意味、ウエイトトレーニングよりきついレジスタンストレーニングに取り組んでいるからだ。

 毎朝、北山は球場に着いたら必ず行なうことがある。呼吸と立ち方の確認だ。

「呼吸......⁉︎」

 囲み取材で記者が思わず問うと、北山は「説明したら、たぶん3時間くらいかかります」と笑った。

「どこに重心があるのか。その日の朝になって軸のズレとか重心のズレとか、いろいろあるので、それを毎日同じ動作をしてチェックする。その場で感じて、それを基にエクササイズしたりしています」

 そうした取り組みの先にあるのが、現在の投球フォームだ。ノーワインドアップから左足をほとんど上げず、すり足でボールを投じる。まさに山本と同様の投げ方だ。

「力=質量×加速度」と考えると、並進運動を速くしたくて、今の投げ方をしているのだろうか。

「違いますね。並進を速くしようとはしてないですね。結果、そうなればいいという感じです」

 以上の考え方は、矢田トレーナーに取材した時も指摘されたものだ。北山が続ける。

「すべてそうなんですけど、結果としてそうなるように、過程をどのように変えていくかというイメージでやっています。結果にフォーカスして『並進を速くしよう』とか、『リリースを前で離そう』っていうところだけを考えると、動きに偏りが出てしまう。結果としてそうなるためにはどこにポイントや意識を置いたり、体のどの部分をより変化させていかないといけないのかなと感じながら日々やっているので。ゴールに目的をあまり置きすぎないというか」

【キャプテンの経験が生きている】

 宮崎合宿中、「教授!」とあだ名を口にするファンがたくさんいた。それくらい北山の頭脳明晰は知られているが、実際に話すと驚かされた。奥深い矢田トレーナーの取り組みを感覚的に理解し、言葉で的確に表わすのだ。これほど自分の取り組みを理路整然と語る日本人プロ野球選手に初めて出会った。

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