篠塚和典がコーチ時代から見てきた坂本勇人のすごさ 「技術の習得に貪欲で地道な努力を繰り返してきた」
篠塚和典が語る坂本勇人 前編
生涯打率.304、2度の首位打者獲得。卓越したバットコントロールと華麗なセカンドの守備で、長らく巨人の主力として活躍した篠塚和典氏。そんな篠塚氏に「技術的に優れたバッター」を聞いたところ、間髪入れずに名前を挙げたのが巨人の坂本勇人だった。
坂本のすごさはどこにあるのか。巨人の一軍打撃コーチ時代、坂本をルーキーの時から指導し、その後も成長の過程を見守ってきた篠塚氏に、当時のエピソードと併せて聞いた。
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【入団当初の印象は?】
――初めて坂本選手のバッティングを見た時の印象は?
篠塚和典(以下:篠塚) 勇人が1年目の宮崎キャンプで、紅白戦か何かの時に初めてバッティングを見たのですが、体格がよかったですし(186cm・86kg)、タイミングのとり方もよかった。あとは「構えた時の雰囲気があるな」と。打つ、打たないは別として、打席での雰囲気は大事なことなのですが、そういうものをすごく感じました。
2007年9月、プロ初安打が決勝打となりお立ち台に上がった坂本 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
――坂本選手のプロ1年目、篠塚さんは打撃コーチをされていましたね。
篠塚 「どういうバッティングをするのかな」と、最初は見ているだけでしたけどね。自分の場合は、バッティングについてアドバイスをする選手としない選手がいるのですが、勇人の場合はこちらから言わなくても自分でいろいろ考えてやるタイプでしたから。状態が悪い時に少し口を出すぐらいで、基本的にそれほどアドバイスをすることはありませんでした。
2年目にレギュラーに定着しましたが、プロのピッチャーのボールに対応しようと考えながらバッティングをしていることが見てとれました。打席を重ねるたびに課題を克服しようと努力を積み重ね、成長していきましたね。
――篠塚さんはバッティングの技術に対して厳しい目をお持ちですが、歴代の選手のなかでも坂本選手のバッティングを高く評価されていますね。
篠塚 彼は"天性のホームランバッター"というわけではありませんが、いろいろなボールに対してアジャストできます。体が泳いでも、ある程度はしっかりボールをとらえられますし、詰まりながらでもヒットゾーンにボールを運べる。練習の時からそういうことを想定して取り組んでいました。
練習で「泳いで打ってみよう」と意識して取り組んでいたこともありましたが、そんな選手はあまりいないんです。普通のバッターであれば「いい形で打ちたい」という気持ちが先に立つでしょうけど、それだと試合では通じません。相手バッテリーはいかにバッターの体勢を崩すか、タイミングを外すかを考えて攻めてくるわけですから、「泳いでもいい」「詰まってもいい」という意識が必要ですし、そういう意味で彼は試合で通じるバッティング練習をしていたということです。
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著者プロフィール
浜田哲男 (はまだ・てつお)
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。