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ヤクルト原樹理が「心が折れたことは何回あったかわからない」から694日ぶりに一軍登板を果たすまで (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 この年、原は17試合に登板して2勝6敗、防御率5.19。状態は上がってこず、見ていてもどかしい投球が続いていた。

「試合では投げることのストレス、痛みのストレスがボディブローのようにどんどん効いてきて、それだけで終わればまだいいんですけど、打たれたり、失点したりするとトドメの一撃になる」

 前出の小野寺コーチは、次のように語る。

「途中で心が折れたこともありましたが、そのなかで自分と向き合い、やっとこれだというものに出会えた。それが今のいい形になっていると思います。ボールも数字以上に速さを感じます。あそこであきらめていたら終わりだったでしょうし、なんとか自分を奮い立たせて、しつかりやった結果ですよね」

 原に踏ん張れた理由を尋ねると、「何だろう......」としばらく考え込んだあと、口を開いた。

「あの時期は、とにかく一日を終えることに必死でした。あとは周りから『また痛いんだ』『またダメなんだ』という目で見られるのはわかっていたので、『絶対に痛いとは言わない』『絶対によくなってみせる』と、見返したいじゃないですけど、そういう気持ちですかね」

【痛みがないと生きている実感がない】

 そんな原に明るい陽射しが差し込み始めたのは、2023年のシーズン終盤だった。

「それまでは『今日はキャッチボールをやめよう』という日があったんですけど、9月に入ってから毎日投げられるんですよ」

 その声は弾み、9月26日の西武戦では6回1失点(自責点0)と好投。「去年の最後の登板はよかったですね」と振り返った。

「変な話ですけど、あの頃は自分ではわからないうちに痛いところを探していたり、もはや痛みがないと生きている実感がなかったというか(笑)。そのことをいろいろな方から『痛みを探しているような投げ方をしているし、痛みを出そうとした投げ方になっているよ』と指摘されて、『もっとこうしてみたら』と助言をもらって、そこでやった結果でした」

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