高木豊が「選手が育たない」理由を語る 巨人・門脇誠、DeNA・度会隆輝ら若手の起用法に警鐘 (2ページ目)
――首脳陣はなぜ、若手の選手たちをすぐに代えてしまうと思われますか?
高木 我慢ができないんじゃないですか。今は監督やコーチが選手との距離が近すぎるとよくないとか、「ひいきしている」などと言われるので、あまり近づけないと思うんです。そうなってくると、愛情をかけにくいですよね。感情だけでスタメンを選ぶなんてことはないでしょうが、"この選手"と思うような選手がいなければ、育てるよりも、その時に状態のいい選手を使っていくことになります。ドライにならざるを得ないというか......。
近年で例外だったのは、DeNAの牧秀悟や阪神の佐藤輝明。ポテンシャルがあって、ルーキーイヤーからいい数字を残してホームランも打てて、ポジションを与えられている。ただ、そんな選手はごくわずかですよ。
【求められる、監督やコーチ陣の精神力】
――ある程度続けて起用されないと、育つ選手も育たなくなる?
高木 昔、川相昌弘(元巨人、中日)が犠打の世界記録(通算533犠打)を作りましたよね。今は犠打が減っているので、ああいう選手は育たないでしょう。犠打がうまくても価値が上がらないし、「もっと打てる選手のほうがいい」となるじゃないですか。なので、川相が今の時代にいたら、犠打や守備固めの要員でベンチに入れたかもしれませんが、レギュラーとして君臨できたかというと難しいと思います。
調子が落ちて打てなくなって、チームに貢献できない選手は使い続ける必要がなく、代えられることは当然という考えが普通になってきている気がします。それと、将来のビジョンを描きながら選手を使う、"先見の明"がある指揮官が減ったということです。中途半端に競争はさせるけど、結局は育てていくべき選手、レギュラーを決められないという事態に陥っていますよね。
――先見の明がある指揮官が減ったと思われる理由は、どこにあると考えていますか?
高木 SNSなどで批判を浴びることの影響は大きいでしょうね。「なぜ、あんなに打てないのに代えないんだ?」「なぜ、あの場面で続投させたんだ?」とか、世間の声が届きやすいじゃないですか。それをどこかで見たり聞いたりすれば、気になることもあるでしょうし、選手を代えることも日常茶飯事になっていく。
結果が出ない選手を代えておけば、"何かを考えている風"になるんですよね。逆に代えなければ、「あの指揮官は何も考えていない」と言われてしまう。そういったことを気にして選手を起用していては、選手は育たないということです。
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