元DeNA・乙坂智が語るメキシコ生活のリアル「家のアパートでお湯が出るだけで、マジで幸せ」 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

── ギリギリまで近づいても、最後の一歩が大きい?

乙坂 メキシカンリーグにも、メジャーで何年間やってきたという選手がいます。一緒にプレーすると、そんなに差がないところもあるし、一方で「ここは勝てねぇ」っていうところもある。

── たとえば?

乙坂 一番感じたのはベネズエラのウインターリーグでロナルド・アクーニャ・ジュニア(メジャーではブレーブスに所属)のプレースタイルを見た時、「スケールでかっ。やることたくさんあるわ」って。アクーニャにはバッティングについてめちゃくちゃ聞きました。「おまえ、何でも打てるじゃん」とか言ってくるんですけど、「いやいや、おまえのほうが打てるやん」って。

── 乙坂選手がメジャーに行くには何が必要だと思いますか。

乙坂 ディアブロスのラモン・フローレス(ブリュワーズほかに所属)とか、メジャー経験のある選手たちに聞いたら、全員「パワー」と言っていました。「おまえは細すぎる。メシ食え、メシ」って。こまごましたものは後からつけられるので、やっぱりエンジンが大事かなと思います。

── 食事は?

乙坂 YouTubeを見て勉強して、味噌汁をつくったりします。日本食のスーパーがあるので。やっぱり日本食がいいですよ。

【目標に向かって突き進めるのはロマン】

── メキシコで給料はどう支払われるのですか。

乙坂 2週間ごとに振り込みです。

── そのタイミングで戦力外通告もあり得ると聞きましたが......。

乙坂 いや、そのタイミングじゃなくてもあると思います。普通に、週の半ばとかでもあります。

── そういうのがちらつくことはありますか?

乙坂 余裕で。その恐怖との戦いですよ。だから、明日もみんなと戦うために今日、頑張ろうという感覚です。

── だからハングリーになるのですね。

乙坂 でも、その精神状態はけっこうきついです。だから、もうひとりの自分をつくって処理してもらっています。嫌な可能性ばかり考え出すと、もうひとりの自分に「おまえはおまえでやってて」と任せています(笑)。

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