ベイスターズの下位指名選手はなぜ育つのか? 河原隆一が語るドラフト戦略と選手獲得秘話 (3ページ目)
宮﨑や佐野といった下位指名でも球界トップクラスになった選手がいることで、DeNAの野手は下位指名であってもネガティヴな感覚を持ち合わせていない。楠本や蝦名、梶原、さらに昨年のドラフトで6位指名された独立リーグで2年連続本塁打王になった井上絢登(けんと)などに話を聞いても、「自分も宮﨑さんや佐野さんのように」という言葉をよく口にし、チャンスをつかもうと日々努力している。
【近年は将来性豊かな高卒選手を獲得】
DeNA体制も13年目となりドラフトの傾向も変化している。チーム力が充実してきた近年では、森敬斗(2019年)や小園健太(2021年)、松尾汐恩(2022年)といった将来性豊かな高卒選手を1位指名するなど新たなフェーズに突入している。
もちろん、獲得した選手全員が成功するわけではない。一方で、育成出身の高卒投手である宮城滝太や中川虎大(こお)が支配下登録され一軍でプレーするなど、興味深いことが起こっているのも事実である。
そういった状況で異彩を放っているのが、2017年に9位指名された捕手の山本祐大である。今季はチームのレギュラーとしての地位を固め、そして侍ジャパンにも選出されるなど、日に日に存在感を増している25歳。高校卒業後、独立リーグで1年プレーをしてプロになった山本だが、9位指名ということでチームとしても過度の期待はなかったはずだ。河原氏は当時を振り返る。
「山本はとにかく肩が抜群によかったんです。近年は松尾のように打てるキャッチャーといった選択をしていますが、当時は、とにかく肩が強いというのが選択肢として大きかったんです。肩の強さは持って生まれたものであり、鍛えても強くならない。バッティングは試合に出ていくうちによくなっていく素質があると見込んで、球団は山本を指名したんです。キャッチャーは身に付けることも多く、成長には時間がかかるものですが、本人の努力もあって山本は予想以上のスピードで成長してくれました」
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