ベイスターズの下位指名選手はなぜ育つのか? 河原隆一が語るドラフト戦略と選手獲得秘話 (2ページ目)
その後の宮﨑の活躍は言うまでもないだろう。35歳になる現在もその打棒は衰えず、守備でもサードでゴールデングラブ賞を獲得するまでに至っている。
河原氏はアマチュアスカウト時代、「セ・リーグだから、まずは守れなくてはいけない」という固定観念があったことを正直に告白する。
「どうしても私は、レギュラーを獲ることのできる野手は"攻守に長けた選手"というイメージが強かったんです。現有戦力と比較して、はたしてこの選手は勝てるのか。そうするとやはり守備に目がいってしまっていました」
佐野の獲得もそんなジレンマの渦中にあり、担当者は河原氏だった。
「明治大時代の佐野はファーストで、どうしてもそのポジションは外国人選手のものと考えがちです。しかし球団としては『打てるヤツはいないか。代打でもいいよ』という考えだったので、佐野を推薦したんです」
ある意味守備を度外視した一芸に秀でた打者という球団の判断は、ハードルを下げることになり、各スカウトの手札が増えたと河原氏は述懐する。
「スカウトたちの意識はそこでずいぶん変わったと思います。考えてみれば、野手は打てなければ試合には出られませんし、一軍に上がるのもファームに落ちるのも打撃の調子が左右します。そこでとにかく重要なのは"打てる打者"ということになり、スカウトたちの選択肢が増えたと思いますね。守備に関しては宮?しかり、試合に出続けることで、だんだんと磨かれていきますからね」
その後もDeNAは楠本泰史(2017年/8位)や蝦名達夫(2019年/6位)、梶原昂希(2021年/6位)というように、定期的に打撃センスが高い野手を下位指名で獲り続けている。
「まさに楠本は、バッティングセンスはどこのスカウトが見てもすばらしいと言うけど、当時は肩回りのケガもあって、スローイングに苦しんでいて評価を下げてしまった選手でした。ドラフトが始まると下位に残っていたので、ぜひ獲ろうということになりました。蝦名と梶原はとにかく身体能力が高く、いい部分を伸ばせれば戦力になるという判断でした。どの選手も想像を超える成長をしてくれていると思いますね」
2 / 4