ヤクルト奥川恭伸が絶望の日々を乗り越え2年ぶり一軍マウンドへ「やめようと思ったことも」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

5月6日 巨人戦(戸田)/7回(68球)、2安打、3奪三振、1死球、1失点

「前回はコースを狙ってやっていたのですが、今日は開き直ってアバウトに投げられました。7イニングを投げて、これだけ腕を振っても大丈夫だった。そこはうれしいですね。やっぱり球数というより、イニングを跨いでいくことのほうがしんどいので」

 1イニングあたり10球以下という奥川らしいピッチングで、イメージどおりに打たせているように見えた。

「投げ始めた頃は、どうしても三振、三振と思っていたのですが、今日はゴロアウトやフライアウトが取れた。今までやってきた抑え方というか、『あっ、こうやってアウトを取っていたんだ』と。アウトの取り方をちょっと思い出したというか、今日はそういう感じです」

5月17日 日本ハム戦(鎌ケ谷)/5回(93球)、8安打(3本塁打)、2三振、1四球、7失点

「球数の心配は完全になくなったので、一軍に上がるため内容にこだわって投げたのですが、修正のしようのないくらいどうしようもなかったですね。途中、真っすぐをなんとか修正しようと投げたのですが......これだけコントロールできなかったのは初めてです。今まで、ストレートの四球とかないので」

 マウンドでは明らかに平常心を失い、試合後も「まだ冷静になれないですね」と話した。こうような奥川の姿を目にするのは初めてのことだった。

「イライラして、集中力がちょっと切れてしまいました。野球はチームスポーツなので、そこは反省するところです。今日は配球とか関係ないですし、これでは一軍では投げられないですね。今日までイライラして落ち込んで、あとで今日の投球をしっかり見返して、なぜあんなピッチングになってしまったのか。どこが悪かったのかを修正して、明日からまた元気に戸田の球場に行かないと」

 この試合に帯同した松岡コーチは、試合後「奥川は今日の失敗を長く引きずらず、次の登板に絶対生かしてきますよ。そこが彼のすごいところです」とコメントした。

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