ヤクルト奥川恭伸が絶望の日々を乗り越え2年ぶり一軍マウンドへ「やめようと思ったことも」 (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 そしてイニング途中、48球で降板したことについては、「今日は、球数は抑えめになるとは聞いていたのですが、50球がメドとは知らなかったので、僕も驚きました」と笑った。

「でもみなさんは、何かあったと思うじゃないですか、僕なので......(笑)。体は超元気です。球数制限なく何球でも、というメンタルでゲームに臨めているのがうれしいし、『痛いな、痛いな』と言いながらやっていたときのことを考えると、ほんと楽しいですね。じゃあ、気をつけて帰ります(笑)」

【もう野球はやめられない】

 6月9日、奥川はチームのビジター試合には帯同せず、戸田球場で練習を行なった。一軍復帰への機運が高まっていることもあり、練習後の取材では戸田で過ごした長い時間についての話が多くなった。

「自分ひとりだったら、心が折れていたと思います。そのなかでチームの方や、チーム外でも治療の先生など、僕を助けてくれた方がたくさんいて、そういう人たちに出会えたのも大きかった。なにより(原)樹理さんや近藤(弘樹)さんなど、一緒にリハビリしたメンバーにはすごく助けられました。最初は『なんで自分だけが......』と思っていたのですが、僕よりもリハビリがしんどい選手がいるし、苦しんでいるのは自分だけじゃないと。そういうことをいろんな人に教えてもらいましたし、自分の目で見て感じました」

 苦しい時間を乗り越えることで、「自分のなかでの成長を感じることができた」と、奥川は言う。

「野球のこともそうですし、自分のことについても知ることができました。ケガに関しても、いろいろなアプローチの仕方など、多くのことを学びました。そういう意味で、決してマイナスではなかったです。逆に変わらなかったことは、うーん、あまり思い浮かばないです。変わっちゃったかな、いろいろと(笑)。これまでずっといいときばかりだったので、悪い時期も経験して、いろいろ思うこともありましたけど、それがあったから強くなった気がします」

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