阪神・大山悠輔に何が起きているのか? 名コーチ・伊勢孝夫に聞く「不振の原因と復帰時期」
昨年、「不動の4番」として阪神の18年ぶりのリーグ制覇、38年ぶりの日本一の立役者となった大山悠輔が開幕から苦しみ、6月上旬、ついに二軍降格となった。昨シーズン、あれほど安定した打撃を見せていた大山に、いったい何が起こっているのか? かつて多くのスラッガーを育てた名コーチ・伊勢孝夫氏に独自の視点から語ってもらった。
現在、二軍調整中の阪神・大山悠輔 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る
【不振の原因ははっきりしている】
今季の大山は開幕から調子が上がらず、「打たなければ......」と気負うばかりにフォームが崩れ、さらに打てなくなってしまった。報道によれば、「自信がなくなった」と自ら志願しての二軍落ちだったようだ。精神的に追い込まれ、どうしていいのかわからなくなったのだろう。
ただ、本人がどこまで気づいているかわからないが、不振を極めた理由ははっきりしている。それは下半身に力が入らないため、体の開きが早くなってしまったことだ。
まず下半身に力が入らないことについては、本人も自覚しているのではないか。だからこそ、それをカバーしようと上体に頼った打ち方になってしまった。上体に力が入れば体の開きが早くなってしまい、バットのヘッドが出てこなくなるし、変化球の対応も悪くなる。これが、大山が苦しんだ理由である。
そもそも、なぜ下半身に力が入らないのか?
岡田彰布監督は大山の二軍降格について「(体の)キレがなくなっている」と言っていたが、私の記憶に間違いなければ、オープン戦終盤にコンディション不良が伝えられていたと思う。
その報道を聞いて、私は「ケガを押してプレーしていたのかな」と思った。足か腰か、ケガの箇所はわからないが、そのために十分なトレーニングができなかったのではないか。そう考えれば、この時期に体のキレが失われても不思議ではない。
キャンプから大山を見ているが、少なくともその時は悪いフォームではなかった。守備も含め、今シーズンもやってくれそうな雰囲気は醸し出していた。ところが開幕してからしばらくして、前述のようなフォームになってしまっていたのだ。
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著者プロフィール
木村公一 (きむらこういち)
獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。