ヤクルト奥川恭伸が絶望の日々を乗り越え2年ぶり一軍マウンドへ「やめようと思ったことも」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 たしかにそのとおりで、さらに奥川は風を利用して漫画のような曲がりをする球や浮き上がる真っすぐを投げている。横でキャッチボールしていた田口麗斗も、その姿を見て大きな曲がりのカーブを投げていた。

「野球って楽しい!」と奥川が笑うと、田口も「楽しいよな!」とつづいた。

【ファームでの6試合】

 奥川はここまでファームで6試合に登板。投げるごとに球数、イニング数を増やし、ピッチャーとしての感覚を取り戻していった。ここまでの登板を振り返ってみたい。

4月20日 ロッテ戦(戸田)/1回(7球)、1安打、無失点

 最速152キロをマーク。予定の1イニングを、奥川らしく少ない球数で無失点に抑えた。

「緊張しましたけど、試合で投げるのはやっぱり楽しいですね。7球で終わってしまったので、今回は終わってからちゃんとブルペンで投げました(笑)」

 これまでは「自分が投げられないのに、見るのはつらいことですから」と遠ざけていた一軍の試合も、「今は調子がいいので見ます。毎日見ています(笑)」と、ようやくチェックできるようになった。

「ただ、一軍への準備とかの目線ではないですね。ふつうに勝ったかな、負けたかなと......。12球団のホームランも毎日チェックしています。見ると気持ちいいじゃないですか。ヤクルト以外の試合も、全試合ではないですが見ます。あとはすごいピッチャー、たとえば巨人の菅野(智之)さんの試合は全部見ています。どんなピッチングをしているのかなと。ふつうにストライクゾーンに投げて抑えて、真似できないですよね。菅野さんは自分がプロに入る前から好きだったこともあって、見ているのはファンとしてですね(笑)」

4月27日 日本ハム戦(戸田)/2回(50球)、3安打、3奪三振、2四球、3失点

 コントロールに苦しんだように見えたが、そのことを確認するとこんな答えが返ってきた。

「コントロールがよくなかったというよりも、いつもだったら振らせられるところに投げても振ってもらえないような形にしてしまいました。ボールの使い方や見せ方の部分で、なかなか真っすぐでいけなかったり......結果、投げる球がなくなる配球をしてしまった。そこに尽きます。一番よくない打たれ方だったので、次にしっかり生かしたいですね」

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