福本豊は「ホームランを打ったら罰金」だった? 世界一の盗塁を可能にしたある能力も松永浩美が語った (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

――松永さんも、ほかの選手のバッティングを観察するようになりましたか?

松永 私が二軍にいた時に「まだまだ、これからの選手かな」と思っていた選手が、ある瞬間にすごくいい打球音を出すことがあるんです。気になって注目していると、カーブをものすごくうまく打っていたり......。それで「カーブを打つ時に、ああいう膝の使い方もあるのか」と思うこともありますし、二軍の選手でも参考になる時はあるんです。そうやって選手をじっくり見るようになったのは、福本さんのアドバイスのおかげですね。

【盗塁に重要な「空気を察する能力」】

――福本さんのプレーで印象に残っていることはありますか?

松永 バッティングの時も走る時も、頭が動かないんです。体の軸がしっかりしている証拠ですよね。走塁の時は、スーッとアイスバーンの上を滑っているような感じでした。野球選手だけでなく陸上選手も含めて、個人的には福本さんのランニングフォームが世界で一番きれいだと思いますよ。

 ただ、福本さんのマネはなかなかできません。私も意識して、頭を動かさないように走ってはいましたけどね。マネしたからといって、福本さんのように走れるわけではないです。

――松永さんも通算で239盗塁を記録しましたが、そんな松永さんから見た福本さんの走塁のすごさとは?

松永 福本さんは、一番最初に"キャッチャーを動かした選手"。今では当たり前のクイックモーションは、野村克也さんが福本さんの盗塁を阻止するために考案したものですし。それに伴ってキャッチャーの技術も向上していきましたが、福本さんがいなければ、盗塁を阻止するためのバッテリーの技術は今ほど高くなかったかもしれません。

 あと、仮の話になりますけど、メジャーだったらもっと福本さんは走っていたはず。リッキー・ヘンダーソン(MLB歴代1位の通算1406盗塁)に盗塁の世界記録を破られましたが、同じ条件で福本さんがプレーしていたら、もっと盗塁数は増えたと思います。あくまでも私の感覚ですけどね。メジャーの投手のクイックはそこまで技術が高くないですし、福本さんがメジャーでやっていたら「楽勝や」と言って走りまくっていたんじゃないかな。

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