「今年ダメだったらクビだと思う」ソフトバンク仲田慶介が語る「育成と支配下のリアル格差」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 高校3年夏にはレギュラーポジションを獲得し、大学では平凡だった運動能力面にもメスを入れた。肉体改造と技術習得に励んだ結果、80メートルだった遠投距離は120メートルにジャンプアップ。50メートル走のタイムは6秒6から6秒1に縮まった。すべては「絶対にエリートたちを追い抜いてやる」という執念が支えていた。

 外野手として強肩の一芸を評価されてドラフト指名された仲田だが、プロ入り後は意外にも外野を守る機会がほとんどなかった。二塁手が手薄だったチーム事情から、内野手に転向したためだ。昨季は二軍で二塁手としてチーム最多の65試合に出場している。仲田は苦笑しながら、「肩が唯一の売りでプロに入ったのに、2年間で1回も肩を見せる機会がありませんでした」と振り返る。

 とはいえ、内野手がプロで外野手にコンバートされる例は数多くあっても、仲田のような「逆パターン」はごくわずかだ。キャンプ中に今宮、栗原陵矢と内野ノックを受ける仲田のプレーを見て、思わず息をのんだ。足さばき、グラブさばきが「生来の内野手だったのでは?」と思わせるほどに見事だったのだ。

【今年ダメだったらクビを覚悟】

 プロでの2年間で、よほど守備練習したのではないか。そう尋ねると、仲田の口からは首脳陣への感謝があふれた。

「今日は本多さん(雄一/一軍守備走塁コーチ)にノックを打ってもらいましたけど、守備コーチの方々にはすごくお世話になってきました。たぶん一軍から四軍まで、すべての方につきっきりで教えてもらったことがあります。その積み重ねで上達してきたと思うので、すごく感謝しています」

 技術的なポイントを聞くと、仲田は「右足の間(ま)」を挙げた。

「ゴロを捕る時に、ボールに対して衝突してしまうことが結構あったんです。捕る直前に右足で間をとって、そこからボールを吸収するように、柔らかく捕る。その意識で練習してきて、ようやく形になってきました」

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