「今年ダメだったらクビだと思う」ソフトバンク仲田慶介が語る「育成と支配下のリアル格差」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 小久保裕紀監督からは、「どこに行けと言われても、守れるようにしてほしい」とリクエストされている。昨季は二軍監督として仲田を重用してきた指揮官だけに、その高い期待はひしひしと感じている。

「まずは守備。あと野手はやっぱり打てないといけないので、少ないチャンスでも結果を残せるように。とくに出塁率は自分に求められていると思うので、こだわっていきたいです。あとはバントや作戦系をしっかりと確実に決める。そういった部分で信頼してもらえれば、支配下に近づいていくんじゃないかと思います」

 プロ3年目にして初めて、春季キャンプをA組で過ごした。A組は宿泊するホテルが豪華という噂を聞いたため確認してみると、仲田は「B組もいい宿舎だったんですけど」と前置きしてこう答えた。

「食事がすごく豪華で、めちゃくちゃおいしいです。外食したいとも思わないですね。バイキング形式でおかずの種類が多くて、寿司や刺身なんか毎回ありますし。チームに届いた差し入れも出してくださっていて、とにかくすごいです」

 B組にいた昨年より、ファンから受ける声援も熱を帯びている。仲田は「ワンプレーへの反応が全然違うので、しっかりといいプレーをして声援をもらえるようにしたい」と気を引き締める。

 その一方で、「あくまでも自分はまだ育成選手だ」と危機感を持ち続けている。

「今年ダメだったらクビと思っています。野球人生をかける覚悟でやっています」

 インタビューを終えた翌日以降、仲田は紅白戦で2日連続マルチ安打を放つなど順調にアピールを続けた。オープン戦では6試合で5打数0安打と苦しんでいるものの、首脳陣から求められている守備面ではしっかりと貢献している。

 背番号155の数字が軽くなる日もそう遠くはないだろう。だが、仲田の下剋上はここがゴールではない。

 努力に努力を重ねた不屈の男が輝くのは、最高峰の舞台こそふさわしいはずだ。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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