侍ジャパン メジャー組ではない4人のWBCアナザーストーリー 世界一へと導いたそれぞれのプロフェッショナル【WBC2023】

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

「PLAYBACK WBC」Memories of Glory

 昨年3月、第5回WBCで栗山英樹監督率いる侍ジャパンは、大谷翔平、ダルビッシュ有、山本由伸らの活躍もあり、1次ラウンド初戦の中国戦から決勝のアメリカ戦まで負けなしの全勝で3大会ぶり3度目の世界一を果たした。日本を熱狂と感動の渦に巻き込んだWBC制覇から1年、選手たちはまもなく始まるシーズンに向けて調整を行なっているが、スポルティーバでは昨年WBC期間中に配信された侍ジャパンの記事を再公開。あらためて侍ジャパン栄光の軌跡を振り返りたい。 ※記事内容は配信当時のものになります

 ダルビッシュ有と大谷翔平、吉田正尚にラーズ・ヌートバーの4人のメジャーリーガーがやたらと目立ったWBC──そもそもの力を思えば当然なのかもしれないが、そんななかでも岡本和真が気を吐き、村上宗隆が意地を見せ、山本由伸と佐々木朗希も才能を見せつけた。14年ぶりの世界一を奪還した日本代表、マイアミでの準決勝、決勝の2試合から輝きを放った瞬間を切りとってみる。

WBC準決勝のメキシコ戦、村上宗隆の安打でサヨナラのホームを踏んだ周東佑京WBC準決勝のメキシコ戦、村上宗隆の安打でサヨナラのホームを踏んだ周東佑京

【周東佑京が語るサヨナラホームイン】

 まずは準決勝。

 真っ先に思い浮かぶのは、周東佑京だ。

 村上宗隆のセンターを超えるツーベースヒットが逆転サヨナラ打となったのは、周東の足があったからだ。4−5と1点ビハインドの9回裏、先頭の大谷翔平がツーベースで出ると、続く吉田正尚がフォアボールでノーアウト一、二塁とチャンスが広がる。ここで逆転のランナーとして吉田の代走に送り出されたのが周東だった。

 驚かされたのは、スタートの速さだ。

 村上の打球が飛んだ直後、周東は躊躇なくスタートを切っている。スタートのよさは身体の使い方と打球判断が生み出すと周東が以前、話していたことがある。

「まず、塁上で力を抜くことです。力が入っていたら身体が動きませんし。力を抜くからこそ身体を自由に動かすことができる。そういう状態にしておくためには、気持ちの準備が必要です」

 この日の周東は、6回あたりから気持ちを盛り上げる準備を始めていた。

「点差(6回の時点では3点のビハインド)は詰まると思っていましたし、自分が行くところをイメージしながら準備をしていました。6回に動き始めて、7回からかな。ある程度、出てきそうな相手のピッチャーの映像を見ながら、気持ちを落ち着かせていましたね。(吉田が塁に出たら)行くことは決まっていたので、還ったらサヨナラだなと思いながら、あの状況でやっちゃいけないことを頭のなかで整理しながら、また気持ちを......やっぱりああいう場面というのは、いかに落ち着かせるかというところが大事じゃないかなと思います」

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プロフィール

  • 石田雄太

    石田雄太 (いしだゆうた)

    1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。

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