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侍ジャパン メジャー組ではない4人のWBCアナザーストーリー 世界一へと導いたそれぞれのプロフェッショナル【WBC2023】 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

「攻めていくなかでの配球だったんで、興奮しましたし、楽しめたなと......世界最高峰の、それもトラウト選手から三振をとれたんで、いい経験をさせてもらいました。あの瞬間、そのままベンチに走って帰りたいくらい、うれしかったですし、テレビでしか見たことのない選手と対戦できて誇りに思いました。いい景色を見させてもらいました」

 一方の大勢がトラウトと対峙したのは3−1と2点をリードして迎えた7回表だった。交代するなり大勢にしては珍しいストレートのフォアボールを出し、ムーキー・ベッツにフォークをレフト前へ運ばれたノーアウト一、二塁のピンチで、トラウトを迎える。

 その初球、大勢もまた事前の言葉どおり、インコースの高めに152キロのストレートを投げ込んだ。トラウトがこれをファウルにすると2球目もストレートをインコースのやや低めへ投じ、詰まったライトフライに打ちとった。

 大勢は投げている最中、相手がトラウトだと気づかなかったそうで、投げ終わってから「トラウトだったのか」と思ったのだとか......集中しすぎていたのかはたまた緊張していたのか、いやはや、さすがはルーキーイヤーにジャイアンツのクローザーを務め上げた大勢ではないか。じつはこのふたり、WBCの前にこんな話もしている。

大勢 今年からひとり暮らしを始めたんだよね。鍋でもする?

戸郷 絶対、焼肉でしょ。簡単な焼肉。妙に凝って美味しくなかったらイヤなんで、安定のタレで......ホントは宮崎県民御用達の戸村のタレで食べてもらいたいんですが、大勢さん、好き嫌いありそうなんで、無難なところで(笑)。

大勢 じゃあ、僕は地元の(兵庫県)多可町にある八千代の巻きずしの店が銀座にオープンしたんで、それをお土産に持っていくよ。

 WBCが終わればシーズン開幕前の慌ただしい時期ではある。それでも、わずかながらの余韻に浸るくらいは構わないだろう。戸郷と大勢、ふたりは焼肉と巻きずしで世界一を祝えたのだろうか──。

著者プロフィール

  • 石田雄太

    石田雄太 (いしだゆうた)

    1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。

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