日本をWBC1次リーグ全勝突破へと導いた「勝利とロマンの栗山流二刀流采配」を紐解く3つの決断【WBC2023】 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

「こういうのって縁なのかなと思うじゃないですか。自分がやらなきゃいけないことは、野球にどんな恩返しができるかということだから、こういう縁は大切にしないといけない。この写真を見た瞬間、ああ、これは野球の神様が決めたことだったんだって、胸がときめく感じがありました。ヌートバーはお父さんがオランダ系のアメリカ人ですから、オランダから出るという選択肢もあったかもしれません。それでも、子どもの頃に佑樹たちと出会ってからの夢だからと言って、日本代表として出たいと言ってくれたんです」

 今でこそ、もう忘れてしまったかもしれないが、選ばれた当初は「ヌートバーって誰だ」「メジャーでもそんなに抜きん出た成績じゃない」「日本の選手を選んだほうがいい」という声が上がっていた。

 しかし栗山監督はそういうネガティブな発想に臆することなく、日本の野球を前に進めるためにヌートバーを日本代表に加えた。その決断もまた、4連勝という結果をもたらした源だったことは疑いようがない。

3 村上宗隆を4番から外さなかったこと

 苦しみ続けた1次ラウンド。ストライクを見逃しては天を仰ぎ、チャンスで打ち上げてはガックリと下を向く。日本代表の4番、村上宗隆は4試合で14打数2安打、打率.143、打点2、7三振、5四球、初ヒットが出たのは15打席目、ホームランはゼロ──国際試合のストライクゾーンに戸惑い、打ち方の感覚に迷い、村上はデフレスパイラルに陥ってしまった。

 前を打つバッター(大谷翔平)が敬遠されて自分で勝負されたり、結果が出ないことを周囲に気遣われたり、23歳の三冠王は初めてのWBCでこれまでに経験したことのない屈辱を味わわされた。村上はこう言っている。

「(気遣われるのは)すごく嫌でしたね。チーム(ヤクルト)でもそういうことを味わうことはないですし、逆にね、『打てよ』とか、そういった言葉をかけられたほうが僕自身はラクになれる部分もあったと思うんですけど、でも、これも経験なので......僕にしかできない経験だと思いますし、プラスにとらえて頑張りたいと思います」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る