江川卓に対し「裏切り者のチームに負けるな」9回まで無安打投球も小山高の執念に屈し作新学院は甲子園出場を逃した (3ページ目)
「8回に作新が一死二、三塁にしたんですよ。次のバッターがピッチャー強襲のライナーを放ち、小山高のピッチャーが捕ったと思ったら、そのままグラブを落としたんですよ。拾ってファーストへ投げてツーアウト。それでセカンドに投げたのかな。相手は(併殺と勘違いしてベンチに)帰っちゃった。(ノーバンでの)捕球じゃないから、僕は『回れ、回れ』って大きな声で言ったんですよ。でも、サードランナーはそのままベンチに帰ってきちゃった。その時、サードランナーがホームを踏んでいたら、ヒット1本も打たれずに甲子園に出られたんですから。漫画みたいなシーンでしたよ」
9回が終わり、実質4試合連続ノーヒット・ノーランを達成するも、0対0のまま延長戦へ。これ自体も漫画的展開だ。
【37イニングぶりの安打】
だが10回裏、二死から3番打者にセンター前にふらふらっと落ちるテキサスヒットを打たれる。じつに37イニングぶりの安打だった。このヒットにより小山ベンチ内は大いに盛り上がった。
「よーし、打てる、打てるぞ!」
この勢いは、次の回につながる。11回裏、小山の攻撃。この回先頭の4番・金久保は初球のストレートを力で持っていきセンター前ヒット。
「絶対江川に勝ってやる!」
積年の恨みではないが、勝利への飽くなき執念が金久保を駆りたてた。
この回が勝負とみた小山の小林松三郎監督は、5番・和田幸一に送りバントのサインを出す。だが、和田は2球続けてカーブをバント空振り。これでツーナッシング。
「やべぇ、バットに当たらねえ」
焦燥感に満ちた和田に、監督の小林は「打て!」のサインに変更した。
「なんとかしなきゃ」
必死の思いで、和田はベースに思い切りかぶさった。すると、外角アウトコースに来たストレートにポンッとバットを出した打球はライト前に転がった。これで無死一、二塁。次の打者がバントで送り、一死二、三塁。ここで作新バッテリーはスクイズを警戒しつつも、ストレートでワンストライク。
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