元巨人左腕・池田駿が難関国家試験に合格 野球は「戦士」公認会計士は「魔法使い」? (5ページ目)
【巨人で本当にやっていけるのか...】
ーープロ野球を意識し始めたのはヤマハに入ってからですか?
そうですね。社会人になってからプロへの気持ちが出てきました。ヤマハからは、僕が大学1年とか2年生くらいの早い段階で「卒業後はうちで野球しないか」と、声をかけてもらっていたんです。
ーーそして、ヤマハ2年目に社会人野球日本選手権で優勝。池田さんはMVPを獲得し、プロ入りが現実味を帯びてきました。
ヤマハに入っていなかったら、プロ野球どころか、大学で野球をやめていたかもしれません。大学時代は、本当につらいと思ったことが何回もありますが、ヤマハから声をかけてもらって、僕のことを見てくれている人がいるんだ、と。もうちょっと頑張ろうかなと思えました。
ーー2016年のドラフトで読売ジャイアンツから4位指名を受けました。指名時はどんな気持ちでしたか?
ドラフト前に、ヤマハからは「プロに行ってほしいけど、ドラフト5位以下だったら、大事な戦力なので残ってもらいたい」と言っていただいていました。僕自身、4位以上は難しいだろうと思っていたんです。
そこでいざ、巨人から4位指名で呼ばれて......なんかもう大丈夫かなという気持ちになっちゃって、いろんな感情が出てきました。もちろんうれしいんですけど、それより巨人で本当にやっていけるのかという心配のほうがありました。
ーー巨人では1年目から、中継ぎ投手として33試合に登板の活躍! 振り返ると、どんなシーズンでしたか?
正直、プロ野球は今、データ野球になっているので、たぶん、1年目であれだけ投げられたのは、ただ相手のデータ不足だと僕は思っています。2年目は同じことやってもやっぱりすごく打たれるわけで。そのデータを超える自分の成長があればよかっただけの話ですけど、その成長はできなかった。1年目はビギナーズラック的なところが多々あったのかなと。
ーー2020年のプロ4年目のシーズン途中で、巨人から楽天へトレードとなりました。どう受け取りましたか?
前年のプロ3年目のシーズンから、自分をドラフトでとってくれた高橋由伸監督から原辰徳監督に代わって、使ってもらえなくなってきていて、そろそろ危ないんじゃないかなと思っていました。そんな矢先でのトレードだったので、ある意味、環境も変えられますし、気持ちもコロッと変わって、いいタイミングで出してもらえたなと思いました。
ーー巨人と楽天の雰囲気は違いましたか?
巨人は1回負けると、チームの雰囲気がお葬式になるんですよ。それがいいとか悪いとかじゃなくて、やっぱり常勝軍団じゃなければいけない感じがすごくありました。一方、楽天は全然そんなことはなくて。同じプロ野球でも、カラーが全然違いました。僕は、楽天のほうが合っていたかな、と。
ーー後編では、プロ野球選手から公認会計士を目指していく経緯を詳しく伺います。
後編<元プロ野球・池田駿はシーズン中ロッカーでも試験勉強 公認会計士合格後のキャリアを語る>を読む
撮影協力/CPA会計学院
【プロフィール】
池田 駿 いけだ・しゅん
1992年、新潟県生まれ。新潟明訓高では投手として夏の甲子園8強進出し、日米親善高校野球の全日本選抜チームに選出される。その後、専修大を経て、2015年にヤマハ入社。2016年の社会人日本選手権で優勝。2016年ドラフト4位で巨人入り。1年目に33試合に登板。2020年途中に楽天へ移籍し、2021年シーズン後に現役引退。2023年、公認会計士試験に合格。現在は、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」で講師を務めている。
著者プロフィール
門脇正法 (かどわき・まさのり)
マンガ原作者、スポーツライター。1967年、埼玉県生まれ。日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。アニメ『ドラゴンボールZ』の脚本家である小山高生氏からシナリオを学び、マンガ原作者デビュー。特にスポーツアスリートの実録マンガを得意としており、『世界再戦ー松坂大輔物語ー』(集英社/少年ジャンプ)、『好敵手ー室伏広治物語ー』(同)、『闘球「元」日本代表ー福岡堅樹物語ー』(集英社/ヤングジャンプ)の原作を担当。現在はマンガの原作だけでなく、「少年ジャンプ」のスポーツ記事特集『ジャンスタ』を中心に、『webスポルティーバ』の「文武両道の裏側」など、スポーツライターとしても活躍中。著書に『バクマン。勝利学』『少年ジャンプ勝利学』(ともに集英社インターナショナル)などがある。
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