阪神・村上頌樹を変えた巨人・岡本和真から奪った三振 クビ覚悟で挑んだプロ3年目に何が起きていたのか

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

阪神・村上頌樹インタビュー(前編)

 38年ぶりの日本一を果たし、オフになっても虎戦士のメディア露出が続いている。そのなかには、もちろん村上頌樹の姿もある。開幕から31イニング無失点のNPB記録から始まり、終わってみれば10勝をマークし、最優秀防御率(1.75)のタイトルを獲得。さらにNPB史上3人目となる新人王とMVPのダブル受賞。昨年末に行なわれた契約更改では、球団史上最高となる875%アップの推定6700万円でサイン。プロ2年間0勝の右腕にいったい何が起きたのか。

2023年シーズン、新人王とMVPをダブル受賞した阪神・村上頌樹 photo by Koike Yoshihiro2023年シーズン、新人王とMVPをダブル受賞した阪神・村上頌樹 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る

【戦力外覚悟で挑んだ3年目】

── 1年前の契約更改のことを覚えていますか。

村上 とくに話すようなこともなかったので、流れ作業みたいな感じで書類にサインをして、「ありがとうございました」で終わったと思います。

── 2021年に入団してから2年間は一軍未勝利。2年目の2022年は一軍登板はありませんでした。

村上 だから2023年は、結果を出さないと危ないんじゃないかという気持ちになっていました。

── 危ないというのは、戦力外も覚悟したと?

村上 そうですね。タイガースは若い選手が多く、大学から来て3年、一軍で何もしていなかったら危ないなと。とにかく結果を出さないとあとがない、という感じにはなっていました。

── 2023年の結果次第では、25歳で野球人生が終わることも頭にあったと? ユニフォームを脱いだら、何をしようかと考えたりしたことも?

村上 ありました。でも、何ができるかって考えたら、野球以外のことは浮かばなくて......。野球で頑張るしかないなと思いました。

── 小坂将商さん(智辯学園/野球部監督)に頼んで母校のコーチをするとか?

村上 ハハハ(笑)。

【ストレートの質が向上】

 今でこそ笑って語る村上だが、2023年の成績次第ではいま頃どうなっていたかわからない。あらためて村上のプロ入り後の成績を見てみると、1年目はファームながら10勝(1敗)、防御率2.23の成績を残し、最多勝、最優秀防御率、最高勝率(.909)のウエスタンリーグ投手三冠に輝いた。2年目もファームで最優秀防御率(2.23)、最高勝率(.700)の二冠を達成。さらに連盟表彰外ながら最多奪三振(74)も記録した。

 しかし一軍登板は1年目の2試合のみ。ファームでこれだけの結果を残しても一軍に呼ばれないことに強い危機感を抱き、「何が足りないのか?」と自問自答の日々。それでも目指すべきものは見えていた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る