阪神が日本一に王手! 岡田監督の勝負手に応えた猛虎打線で光った森下翔太の冷静さ (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 指揮官がそう振り返ったように、ファウルで粘った糸原は7球目のストレートに対してバットを内側からうまく出し、レフト前に落として一、三塁とチャンスを拡大した。

 絶好調の1番・近本光司がライト前タイムリーで1点を返すと、つづく中野拓夢が送りバントを決めて一死二、三塁とする。ここでオリックスの中嶋監督は、3連投となる宇田川にスイッチ。山﨑は変化球にキレを欠いていたことに加え、絶体絶命のピンチを切り抜けるために、高めのストレートと鋭く落ちるフォークで三振を狙える宇田川に託したのだろう。

 かたや、岡田監督は3番・森下翔太にセンター返しを意識するように伝えると同時に、代走で出た三塁走者の植田海には「ゴロゴー」のサインを出していた。

【ミスを取り返したい一心】

 甲子園の9割5分を埋める阪神ファンのボルテージが上がるなか、一打逆転の場面で打席が回ってきた森下には是が非でもという強い気持ちがあった。7回表、ライトに飛んできたゴロ(セカンドゴロエラー)を素手で捕りにいき、後逸するという凡ミスで追加点を与えていたからだ。

「エラーしたあとも(木浪)聖也さんとか熊谷(敬宥)さん、いろんな人が声をかけてくれました。『おまえも声出していけよ。必ずチャンスで回ってくるから』って言われていて、本当にチャンスが来たので集中していきました」

 初球は内角高めのフォークが抜け気味でストライクとなり、ストレートが3球続いて2ボール、2ストライク。オリックスバッテリーはフォークを2球続けて空振り三振を狙いにいったが、森下はなんとかバットに当てた。

 勝負の7球目。オリックスの捕手・若月健矢は真ん中高めにストレートを要求したが、宇田川の投じた152キロのスピードボールは引っかかり気味になって低めのボールゾーンに向かう。森下はコンパクトに振り抜くと、打球は右中間を破る三塁打となってふたりが生還。阪神が一気に逆転した。

「ミスを取り返したいっていう思いしかなかったので......。(ガッツポーズは)感情が出ましたね」

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