なぜオリックスは続々と新戦力が台頭するのか ルーキー茶野篤政を育てた最強の育成戦略 (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 独立リーグからNPBへ進む選手はごくわずかだ。なかには、ドラフトで指名されることよりも、野球を続けることに重きを置く選手もいる。しかし茶野は、本気でNPBを目指していた。

「とにかくNPBという目標に関しては、一歩も後ろに引かない。辛抱強く、どれだけきつい練習をしても前向きについてくる子でしたね」

【徳島球団の起用方針】

 独立リーグからNPBの門を叩くには、まずチーム内の競争に勝ち、レギュラーとして突出した成績を残す必要がある。しかし昨年のキャンプ終了時から茶野は調子が上がらず、開幕メンバーから漏れた。しかし岡本は、しばらくして茶野にレギュラーポジションを与えた。

「フロントとも相談して使うと決めました。ただし、競争に勝ち上がったというわけではありません。実力だけなら彼より上の選手はいましたが、茶野にはこれだけのチャンスを与えようと」

 それは徳島球団の方針だった。チーム内での競争に勝った者が起用される日本球界に対し、海の向こうのマイナーリーグでは育成が優先される。過去にドミニカのアカデミーを取材したが、当地のルーキーリーグでは、監督は球団からの指示に従い登録選手に出場機会を振り分けていた。徳島球団の方針も同様で、選手それぞれにある程度の打席数、イニング数を与えている。

「もちろん競争はさせます。でも、チャンスを与えないと選手を預かっている意味がありません。だって、選手はゲームのなかでしか成長しませんから」

 現役時代を大洋、日本ハムで過ごした岡本は、1996年に現役を終えると、そのまま日本ハムのコーチ、二軍監督を務めた。この時、のちにGMとなる吉村浩氏(当時はGM補佐で、現在はチーム統括本部長)からかけられた言葉が、徳島での方針の原型になっていると語る。

「ファームでは、とにかく各選手に1000打席与えてやってくれ。そこまでいくと、その選手の色が出てくる」

 1000打席といえば、ファームのレギュラーとして3年プレーして到達する数字である。実際には、すべての打者がこれだけの打席数を与えられるわけではないだろうが、それでもできる限りチャンスを与えていくと、選手たちの成長を肌で感じることができた。

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