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プロ22年目、西武・中村剛也を突き動かす「もうちょっと野球がうまくなりたい」の思い (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 三振という切り口から、どうやって中村のすごさを伝えるのか。彼を囲んだ記者陣がそれぞれ質問していくなか、「三振もアウトのひとつにすぎない」と割りきれているのではないかと思い、聞いてみた。

「まあそうなんですけど、基本、誰もが三振したくないので......。でも崩されて、当てにいくようなバッティングもしたくない。けっこう難しいんですよね。当てたらヒットになる確率も上がる。難しいところですね。まあ、追いかけていきます」

 追いかけていく──。

 できれば三振したくないが、リスクを負わなければビッグリターンは得られない。同時に、三振してはいけない場面もある。その狭間で打者は戦っていて、中村自身、若手の頃は迷いもあったという。

 そうした求道者の真髄を図らずも見せたのが、翌日、カード最終戦だった。

 まずは4点先行された2回裏に先頭打者で1打席目に入ると、7号ソロを左中間に突き刺した。楽天のルーキー・荘司康誠が2ボールから投じた146キロのストレートが真ん中低めにやや甘く入ると、中村はひと振りで仕留めた。反撃の狼煙を上げる、見事な一発だった。

「おかわり、おかわり、もう一杯!」

 中村がホームランを放つと、以降の打席でレフトスタンドのライオンズファンはそう期待して大きな声援を送った。対して、中村は3本のシングルヒットと四球で応えた。

 そのなかで4点を追いかける7回無死一、三塁から選んだフォアボールもすばらしかったが、2点差に迫った9回一死からレフト前に放ったヒットはとりわけ見事だった。単打狙いに見えたが、追いつくには最低2点が必要になるから出塁を優先してスイングしたのか。

「それも考えましたし。相手のクローザーなので、なんとか打てるようにと思って」

 勢いのあるストレートと鋭いフォークを投げていた松井裕樹に対し、どうすれば塁に出られるか。中村はそう考え、2球目に内角高めに投じられた149キロのストレートをレフトへ弾き返した。

 今、自分はどんなバッティングをすべきか。フルスイングを繰り返した若手時代から、思うように打てなくなった30代前半を経て、復活を果たした30代後半の進化だった。

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